Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション8 <教育に活かす> 超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成

(S186)

超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成:循環器内科医の立場から

Reports of Echocardiogram by Sonographer: Request as a Cardiologist

高野 真澄

Masumi IWAI-TAKANO

福島県立医科大学附属病院集中治療部

Intensive Care Unit, Fukushima Medical University Hospital

キーワード :

循環器領域における超音波検査の特徴として,対象とする臓器が拍動する心臓であり,壁や弁などの動きを観察する必要があること,多くの計測値や血流情報から病態や重症度を診断すること,などがあげられる.実際の心エコー図検査では,まず基本断面(胸骨左縁長軸・短軸像や心尖部像)のBモード画像を描出するが,それぞれの断面を描出した際に適切な視野深度,STGを併用したゲイン調整,フォーカス位置などの調整を行う.適切な断面を得るために,患者の体位や呼吸の調整を行うことも必要である.さらに,カラードプラ法により弁疾患や短絡疾患,異常血流の有無を確認し,連続波・パルス・組織ドプラ法を駆使して病態を把握していく際には,ドプラ感度・流速のスケールなどの調節も必須である.拍動する心臓を観察しながら多岐にわたる測定項目が手順を踏んで行うためには,検査法に合わせた超音波機器の設定がなされている必要がある.多くの施設では,1台のエコー機器が成人の体表面心エコー図検査だけではなく,経食道心エコー図や負荷心エコー図,3D心エコー図,strain法,血管エコー,さらには対象が小児である場合やその他の領域にも使用する場合もある.様々な検査法において適切な画像取得をするためには,それぞれ設定が異なることは歴然としており,迅速にかつよりよい病態評価をするために,それぞれのプリセットを設定しておくことが重要である.プリセットを組むにあたっては,超音波検査に精通した医師・技師が協力し,出来るだけ短時間でより多くの情報を取得し,かつ取りこぼしのないように設定する必要があると考える.一つの施設で複数の超音波機器を使用している場合であっても,できる限りワークフローを統一するように工夫すべきである.近年,取得した画像はデジタル化され,電子カルテなどを通じて検査者のみならず,検査をオーダーした医師や医療スタッフ間で容易に情報を共有することが可能となっている.その画像は,説得力を持ってレポートに記載されている診断名や重症度・病態を表現しているべきである.例えば,重症の大動脈弁逆流症においては,重症度を決定する重要な指標である大動脈弁位における最大血流速度が得られている必要があり,僧帽弁逸脱症では治療法を決定するために逸脱した弁尖とそれに伴う僧帽弁逆流の広がりや方向が示されているべきである.これらは,“いつものきれいな基本断面”によって得られるとは限らず,病態に応じて臨機応変に最も適切な断面を描出する.検査者は“心エコー図の検査手順”のみならず,“心エコー図によって何を評価としているのか”の理解が必要であると考える.レポート記載時には,“その所見が何を示しているのか”を,レポートを受け取る側に伝わる記載をすべきである.例えば,様々な計測値は年齢に応じて正常値が異なっているが,得られた左室収縮・拡張能の指標が加齢に応じた年齢相応の変化であるのか,あるいは加齢に応じた変化の域を超えて何らかの病態を示しているのか.左室肥大例において,二次性の心筋症(心アミロイド-シスやファブリー病など)を示唆する所見があるかどうか.心エコー図検査がこれまで診断されていなかった疾患を発見する契機となり,患者の予後を左右することもある.心エコーレポートは単なる計測値や所見の羅列に終始せず,レポートを読んだ担当医が,精査をすすめるか,あるいはどのように治療すべきかを判断する材料につながるものとなるべきである.心エコー図検査担当者は,自分が担当した患者がその後どのような検査を受け,どう診断・治療されたかを知り,日頃から病態の理解に努める必要があると考える.