Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション8 <教育に活かす> 超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成

(S185)

超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成:乳房超音波検診における精度管理

Quality Control of Ultrasonographic Breast Cancer Screening

橋本 秀行1, 梶原 崇恵1, 横溝 十誠2

Hideyuki HASHIMOTO1, Takae KAJIHARA1, Jissei YOKOMIZO2

1ちば県民保健予防財団総合健診センター乳腺科, 2川上診療所乳腺科

1Division of Breast Screening, Chiba Foundation for Health Promotion and Disease Prevention, 2Division of Breast Screening, Kawakami Breast Clinic

キーワード :

【はじめに】
近年,乳癌の早期発見,早期治療を目指した乳癌検診に超音波検査が導入されつつある.わが国の乳癌の患者数は年々増加しており,それに伴い死亡数も増加している.そのため二次予防である乳癌検診に対する期待と意義は非常に大きいと考えるが,この超音波検診が本当に死亡率減少効果をもたらすのかは現在,臨床試験中である.超音波検査は,世界標準の検診方法であるマンモグラフィ(乳房X線撮影)に比べ,被曝といった副作用や圧迫による痛みも無く,簡便な検査法である.走査は医師,臨床検査技師,診療放射線技師,看護師といった職種の者が施行できるが,最終判定(診断)は,医師が行うことになる.この判定時に検査した者が撮像した画像やレポートを使うことになるため,走査時の画質調整を含めた精度管理は非常に重要である.
【乳房超音波検診の判定システム】
超音波検診のシステムとして,検査(走査)・判定を一人の医師が行う場合と,検査は判定者以外(例えば検査士)が行い,判定のみを医師が担当する二つの方法がある.超音波検査は本来リアルタイムに評価する検査法であるため,検査と判定を一人で行う場合には,所見の詳細をそのまま判定に活かすことができ,メリットが大きい.しかし,実際の検診では,超音波検査を行う専門医が足りないため,検査士が撮像した画像を医師が判定するシステムを導入している施設が圧倒的に多い.
【画像(画質)調整と記録】
画質の調整は,皮膚,皮下の脂肪組織,浅在筋膜浅層,乳腺組織,乳腺後隙,大胸筋までがはっきりと観察できるように設定する.そのため,適正なゲイン,ダイナミックレンジ,STC(Sensitivity Time Control)の設定が必要であり,現在,開発中であるファントムを使うことも考慮に入れる.この内容は日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)のガイドラインに記載されている1).走査は,全乳房の二方向走査を行い,必要に応じて放射状走査やその垂直方向の走査を追加する.乳癌検診では,『癌を見落とさない,見逃さない』ことがまず重要であるが,超音波検診では,走査した段階でこの『見落とした』・『見逃した』の状況がほぼ決まってしまう.すなわち走査によって指摘された疑わしい病変(画像)以外に,判定の段階で新たな別の病変を指摘(推測)することは不可能である.このため画像調整の精度管理はとても重要である.
【レポート作成】
検査士が撮像した画像を元にレポートを作成することになるが,先にも述べたが,超音波検査はリアルタイムに観察(診断)することによって,その能力を最大に発揮する.レポート作成時は,そのリアルタイムで観察された内容を分かりやすく伝える必要があり,レポートを読むだけで実際のリアルタイムの画像が目に浮かぶことが理想である.しかし,実際には超音波検査は検査士の主観がどうしても入ってしまう検査法であり,必ずしも同じ症例で同一の写真(レポート)が得られるわけではない.やはり検査士とのコミュニケーション,信頼関係は必要不可欠である.
【まとめ】
今後,検診受診者が増加し,超音波検診の需要が高まってくると予想される.その際,医師が走査し読影する体制だけでは全く足りない.走査は検査士が行い,読影は医師がする体制をきちんと整えておく必要がある.そのため,いかに優秀な検査士を育成できるかが,超音波検診成功の鍵であると言っても過言ではないと考えている.
【参考文献】
1)日本乳腺甲状腺超音波医学会編:乳房超音波診断ガイドライン(改定第二版).南江堂,2008.