Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション8 <教育に活かす> 超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成

(S185)

超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成:乳腺領域

Image Conditions and Reports of the Breast Ultrasound by the Medical Sonographer

尾羽根 範員

Norikazu OBANE

住友病院診療技術部超音波技術科

Department of Ultrasonic Examination, Sumitomo Hospital

キーワード :

適切な画質が設定された装置で十分な性能を引き出して的確な判断をくだし,それを確実に伝達できるレポートとして表現,依頼医へ提供することは,いずれも超音波検査に携わる者として重要かつ当然のことといえる.
【画像調整】
超音波診断装置のフルデジタル化以降,ビームフォーミングの改善による空間分解能の向上とともに,多彩な画像処理が行われるようになっている.大きな流れとしてはスペックルノイズを軽減することで病変の視認性を向上させることがあり,空間コンパウンドやフィルタ処理などが行われている.また,体表臓器領域でもティッシュハーモニックが使用されるようになり,方位分解能とコントラスト分解能の向上が図られている.さらに最近は,音速の異なる脂肪成分が多く含まれる乳腺領域で目立つこととして,さらなる空間分解能向上のため受信フォーカスでの音速補正も行われる.これらにより病変の視認性は向上し,登場当初より違和感も軽減しているが,辺縁や内部性状の描画への影響は否めない.現在,装置の調節可能な項目が多岐にわたり,どんな画質でも作れるといってよい.だからこそ工場出荷時そのままで使うことは論外で,使用条件についてよく考える必要がある.新機能をやみくもに否定する訳ではないが,画像処理のOn・Offで比較してその効果を確かめ,従来の画像との整合性も勘案して設定を検討することが必要と考える.スクリーニングと精査など,目的に応じて設定を切り替えるということも考えられるが,場合によっては探触子の切り替えなどもあり,件数の多い検査を行う際の手法としてはあまりに煩雑である.高い分解能を背景に必要最低限の画像処理で視認性を確保しつつ,細かな性状を読み取れるような,存在診断と質的診断の両者が満足できる設定を模索するのが現実的である.
【レポート作成】
適切な画質条件や手法で検査を行い的確に判断が下せていたとしても,それがレポートで表現できず,依頼医へ伝わらないようでは意味がない.まずは発見した病変の大きさ,位置,性状,場合によっては付随する所見によって推定される病変の拡がりなどを正確に表現,伝達することである.そのためには共通の用語が必要であるが,いろいろな主張があって統一は難しいところだが,少なくとも他の立場の人と誤解なく意思が疎通できるよう突拍子もない用語は大いに問題があろう.超音波所見から何が考えられるかを記載することは,検者の意識や診断能を上げることに有用で,推定組織型を記載することに異論はない.もちろん必ずしも性状が典型的ではなく推定組織型を一つに決められない場合も少なくないが,そのようなときには無理に組織型を一つに決めずに,複数の候補をあげて記載するようにする.そして,判断に迷ったら迷ったということが伝わるように表現することが誤診を防ぐ意味で重要である.複数の組織型を記載する場合は必ずその優先順位が必要で,検査結果の解釈や事後の追加検査の適否の判断に通じる.そしてこれはカテゴリー判定の数字表現にも共通する部分のはずである.カテゴリー判定で注意したいことは,悪性を否定できない場合のカテゴリーの3と4の選択で,その違いや自分の判断を見極めないでとにかく間違ってはいなかったというような,安易に数字に逃げ込む姿勢はつつしむべきである.カテゴリー判定の弊害というよりも,カテゴリー判定の誤った使用法というべきであろう.