Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション5 <治療に活かす> 3Dエコーをいかに活用するか

(S179)

膵腫瘤診断における三次元造影超音波検査の有用性

The utility of contrast-enhanced three-dimensional ultrasonography for characterization of pancreatic masses

三輪 治生1, 沼田 和司1, 杉森 一哉1, 清水 悠郎1, 亀田 英里1, 金子 卓1, 田中 克明1, 前田 愼2

Haruo MIWA1, Kazushi NUMATA1, Kazuya SUGIMORI1, Yuro SHIMIZU1, Eri KAMETA1, Takashi KANEKO1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2

1横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病センター, 2横浜市立大学消化器内科学教室

1Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, 2Gastroenterological Department, Yokohama City University

キーワード :

【背景】
膵腫瘍診断において造影超音波検査は,標的病変の血流をリアルタイムに観察可能であり,高い空間分解能,低侵襲性などの利点を有する.また,三次元超音波検査は,autosweepにより取得したvolume dataを再構成することにより,膵周囲の構造の客観的な評価が可能である.これらを組み合わせた造影三次元超音波検査(CE 3D US)は,膵腫瘍診断における新たなモダリティとして診断体系の確立が期待される.
【目的】
膵腫瘤の鑑別診断におけるCE 3D USの有用性について検討した.
【対象と方法】
対象は2007年3月から2012年10月までに,膵腫瘤に対してCE 3D USを施行し,組織学的確定診断が得られた109例.内訳は,膵癌(PC) 83例,腫瘤形成性膵炎(MFP) 14例,神経内分泌腫瘍(NET) 12例.超音波装置は,GEヘルスケア社製LOGIQ7,および4D3CLプローブを用い,超音波用造影剤はSonazoid (0.2ml/body)を使用した.撮像条件は,背景のB-modeを消すことができ,血流検出感度の高い,高音圧造影モード(CHA mode, MI値: 0.6-0.8)を用い,静注60秒後までをearly phase,90-180秒後をmiddle phaseとして数回ずつautosweepによりvolume dataを取得した.評価項目として,両時相において,腫瘤と膵実質の染影を比較し,hypervascular, isovascular, hypovascularの3通りに分類した.また,腫瘤内部の血管像を,Vessel type A (腫瘤辺縁にのみ微細な血管を認める),Vessel type B (腫瘤中心部に口径不同な血管を認める),Vessel type C (腫瘤全体に微細な血管を認める),Vessel type D (腫瘤内に太く蛇行する血管を認める)の4通りに分類した.更に,これらの染影パターンと血管像を組み合わせ,組織学的診断をgold standardとして,各疾患における正診率を検討した.なお,Sonazoidは膵疾患に対して保険適応が得られていないため,当院の倫理審査委員会の承認を受け,患者の同意を得て検査を施行した.
【結果】
CE 3D USでは,腫瘤と膵実質の染影を比較可能であり,腫瘤内部の血管像を三次元的に観察できた.各疾患における代表的な所見は以下の通りであった.PCのうち,94% (78/83)はmiddle phaseでhypovascularであり,88% (73/83)は Vessel type A,またはVessel type Bであった.MFPのうち,93% (13/14)はearly phase, middle phaseともにisovascularであり,79% (11/14)はVessel type Cであった.NETのうち,83% (10/12)はearly phase, middle phaseを通じて染影が持続し,67% (8/12)はVessel type Dであった.両時相の染影パターンと血管像により作られた36通りの組み合わせのうち,今回の対象は9通りに含まれ,各組み合わせにおいて陽性的中率の最も高かったものを,PC pattern, MFP pattern, NET patternと分類した.各疾患における感度,特異度,正診率は,PC; 94%, 92%, 94%,MFP; 86%, 97%, 95%, NET; 75%, 98%, 95%であった.
【結語】
CE 3D USは膵腫瘤および膵実質の血流の評価や,特徴的な血管像を描出することが可能であり,鑑別診断に有用であると考えられた.