Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム20 <治療に活かす> 超音波ガイド下穿刺手技を用いた検査・治療の現状と問題点

(S173)

超音波ガイド下中心静脈穿刺

Ultrasound Guided Cetral Venous Puncture

舛形 尚1, 2, 豊嶋 克美2, 筧 善行2, 千田 彰一1

Hisashi MASUGATA1, 2, Katsumi TOYOSHIMA2, Yoshiyuki KAKEHI2, Shoichi SENDA1

1香川大学医学部附属病院総合診療部, 2香川大学医学部附属病院医療安全管理部

1Department of Integrated Medicine, Kagawa University Hospital, 2Safety Management Office, Kagawa University Hospital

キーワード :

中心静脈静脈穿刺は,高カロリー輸液などの輸液路,血液浄化時の血管確保,経静脈的心臓ペーシング,肺動脈カテーテル挿入のための必須手技である.中心静脈穿刺は解剖学的理解に基づいた従来の盲目的穿刺(ランドマーク法)での成功率は90%程度と高率であるが,血管走行異常の症例もあることから成功率には限界がある.また,中心静脈静脈穿刺には動脈穿刺や気胸・血胸などの機械的合併症が少ないながらもあり,ときに重症化して死に至ることもある.今日,中心静脈穿刺の合併症は医療事故として認識されるようになり,ランドマーク法では現代の医療安全の要求に,これ以上応えられなくなっている.そこで携帯型エコーの普及とも相まって,近年中心静脈静脈穿刺と中心静脈カテーテル(CVC)挿入のための院内ガイドラインを作成したり,CVC挿入認定医制度導入やCVCセンターを設置する施設がみられるようになった.このような流れの中で安全で確実なCVC挿入のために,超音波ガイド下中心静脈穿刺が普及してきた.超音波ガイド下中心静脈穿刺は,従来の体表の解剖学的指標により盲目的に穿刺するランドマーク法に比して,成功率が高く,合併症の発生は低く,さらにこのような超音波ガイド下中心静脈穿刺の有効性は,ランドマーク法の経験の豊富な術者に比べ,経験の浅い術者で顕著であるというエビデンスがある.特に,超音波ガイド下中心静脈穿刺による上述の恩恵は,内頚静脈穿刺において大きい.超音波所見によると内頚静脈が総頸動脈の完全な外側に位置するものはわずか22.2%に過ぎず,前外側が49.8%であり,約30%はランドマーク法によって頸動脈の外側を穿刺しても内頚静脈には当らない恐れがあることからも,内頚静脈穿刺では,超音波ガイド下で動静脈と穿刺針の描出によって有効性が高まるからである.しかし,超音波ガイド下中心静脈穿刺には「落とし穴」と「コツ」がある.超音波画像で観察される血管短軸像(プローブの向き)に直行して血管が走行していると思いこんでしまうことである.これにはプローブを体表に水平方向に動かせるsweep scanをしたり,体表面で傾けるswing scanを行って血管走行を把握することが大切である.また,超音波画像は非常に薄い平面であるため,その中に針先が捉えられているとは限らず,見ている超音波画像とかけ離れた部位で針先を動かしている危険性がある.穿刺角度とプローブの角度を揃え,キツツキが木をつつくように針先を動かせる“Jobbing motion”を行うと,周辺組織の動きによって針先の確認ができる.超音波断層像の平面の中にうまく針先が捉えられれば,針先が血管壁を押している様子や,血管壁を貫く瞬間も観察でき,成功率や安全性が向上する.超音波ガイド下中心静脈穿刺は,現代の患者側からの医療安全要求の高まりからもますます普及することは明らかである.しかし,超音波ガイド下で行っても合併症は少なからず起きている.したがって超音波ガイド下中心静脈穿刺が確立されるためには,正しい超音波ガイド下中心静脈穿刺法の練習が不可欠である.施設内での指導・教育体制の確立や,実体シミュレータを用いたトレーニングコース設定が必要である.