Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム20 <治療に活かす> 超音波ガイド下穿刺手技を用いた検査・治療の現状と問題点

(S172)

超音波ガイド下穿刺手技を用いた検査・治療の現状と問題点

Clinical practices and problems of endoscopic ultrasound fine needle aspiration

花田 敬士

Keiji HANADA

JA広島厚生連尾道総合病院内視鏡センター

Center for Gastroendoscopy, Onomichi General Hospital

キーワード :

超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞組織診(EUS-FNA)は,2010年4月に保険収載されて以降,この手技を用いた診断・治療は大きく進歩し,特に診断に関する手技は国内でも急速に普及しつつある.経食道からの縦隔病変,リンパ節,上下部消化管では主に粘膜下腫瘍,肝胆膵では腫瘍性病変,所属リンパ節へのアプローチが行われており,EUSで描出される病変は部位にかかわらず,安全に診断が可能となっている.腫瘍性病変に関しては,良悪性の判定はもちろんのこと,悪性の場合では切除適応を決定するリンパ節転移の有無の判定が可能である.また,非切除症例では,腫瘍細胞の病理組織学的特性に関して通常の染色法のみならず,免疫染色やフローサイトメトリーなどを用いて判定が可能であり,化学療法導入に際して薬剤の選択に大きく寄与している1).合併症に関しては,播種はごく稀であり,少数の出血および穿孔の報告がみられる.また近年,穿刺に伴うseedingの報告が散見されるが2),今後の成績の集積を待ちたい.一方,EUS-FNAの手技は,治療の分野にも展開されている.2012年4月に超音波内視鏡下の治療手技が一部保健収載されたことから,現在は主として仮性膵嚢胞ドレナージ,膵胆道ドレナージに関する報告が多い.従来,これらの手技は内視鏡経乳頭アプローチが主であったが,病変が膵尾部に存在する,膵管と嚢胞性病変に交通が見られない,あるいは乳頭への腫瘍浸潤などにより経乳頭的なアプローチが困難な場合にEUSガイド下治療の適応となる.特に胆道ドレナージに関しては,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)に代わりうる方法として,十二指腸〜総胆管吻合,十二指腸〜胆嚢吻合,左肝内胆管〜胃吻合と,多彩なアプローチルートの報告がみられ,近年はプラスティックステントのみならず,メタリックステント留置の報告も散見され,high volume centerにおける検討では良好な手技成功率が報告されている.一方,合併症は胆汁性腹膜炎を中心に約10〜20%と報告されており,使用する処置具もEUSガイド下治療に適応したものが少なく,安全に施行するための手技や処置具の標準化の確立が今後の課題である.また,近年癌性疼痛に対するEUS-CPN,CGNなどの神経叢ブロックの報告も散見され,良好な疼痛コントロールの成績が報告されている.悪性腫瘍性病変に対するEUSガイド下のアブレーション等の報告は海外では散見されるが,国内では臨床応用に向けた基礎的検討の段階である3).本講演ではEUS-FNA関連手技の検査・治療成績の現状と課題について報告する.
【参考文献】
1)Varadarajulu S, Fockens P, Hawes RH, et al. Clin Gastroenterol Hepatol 10: 697-703, 2012.
2)Katanuma A, Maguchi H, Hashigo S, et al. Endoscopy Epub 2012 May 23.
3)Bhutani MS. Endoscopy 43: 993-999, 2011.