Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム17 <治療に活かす> 体腔内超音波の現状と展望

(S168)

超音波内視鏡(EUS)による膵疾患の診断と治療

Endoscopic ultrasonography for Diagnosis and therapy of pancreatic disease

坂本 洋城, 北野 雅之, 工藤 正俊

Hiroki SAKAMOTO, Masayuki KITANO, Masatoshi KUDO

近畿大学消化器内科

Gastroenterolgy and Hepatology, Kinku University School of Medicine

キーワード :

【超音波内視鏡(EUS)検査による膵疾患の診断】
EUSは,超音波と内視鏡を融合させた技術であり,膵疾患を含めた消化器系疾患の多種多様な診断,治療に用いられている.その特徴として,消化管壁内外の病変に近接して観察できることから,他の画像診断と比較するとより高解像度で観察できる点が挙げられる.特に,早期発見が非常に難しいことが問題となっている膵癌に対し,他の画像診断では膵管拡張等の間接所見のみ描出される症例でもEUSでは低エコー腫瘤として描出されることがあるため,他の画像で何らかの異常所見が認められた場合には,EUSを施行することが勧められる.
【造影ハーモニックEUS】
1999年経静脈性超音波造影剤が開発され,体表式超音波検査では造影ハーモニックイメージングによる実質染影像の観察が可能となり消化器疾患の質的診断能が飛躍的に向上した.最近,低音圧でもハーモニック信号を発生する第二世代超音波造影剤(ソナゾイド)が登場し,低音圧の探触子を使用するEUSでも造影ハーモニックEUSが可能となった.元来,高分解能であるEUSに造影ハーモニックイメージングが加わることにより,血流による質的診断が行えるようになった.
【EUS下穿刺生検(EUS-FNA)】
電子コンベックス走査型EUSは,メカニカルラジアル式では困難であった超音波画面における穿刺針の描出を可能とし,Interventional EUSとして組織採取あるいは治療に応用されてきている.コンベックス型EUSは内視鏡先端部から出てくる穿刺針を用いて採取することをEUS-FNAと呼び,EUS-FNAにより従来では困難であった膵の病理診断が可能となった.また,穿刺針を超音波で観察しながら病変を刺すことから血管などを避けることが可能で,他の方法と比較すると安全に行える検査である.膵癌診断におけるEUS-FNAの感度,特異度および正診率は,それぞれ88% (44-94%),98% (88-100%)および88% (55-92%)である.EUS-FNAによる病理診断は,治療方針決定に重要な役割を担っている.
【EUS下治療】
EUS下穿刺技術を応用した治療は,本邦でも新しい内視鏡治療として注目されている.薬液を局所に注入する治療と,膵嚢胞あるいは胆管・膵管から消化管へのドレナージに大別される.注入療法の代表的な目的として腹腔神経叢ブロック術が挙げられる.EUS観察下で経胃的に腹腔神経叢へエタノールを注入し,疼痛の神経伝達を遮断するもので,安全でかつ確実に行える方法として注目されてきている.本治療により膵癌患者の79%-88%に疼痛の改善が得られる.EUSを用いた膵仮性嚢胞ドレナージ術は,経消化管的に膵仮性嚢胞を穿刺ドレナージ行う治療法であるが,カラードプラにて穿刺ラインの血管が確認でき,また嚢胞を超音波画像にてリアルタイムに観察しながら穿刺するため,安全かつ確実に嚢胞穿刺が行えると考えられている.88-100%に効果(縮小,消失)が得られる.また,ERCPによる減黄術が困難な閉塞性黄疸に対してEUS下で直接胆管を穿刺し,消化管と胆管の間で瘻孔を形成するEUS下胆道ドレナージ術により,一期的に内瘻化を行うことができる.さらに,慢性膵炎あるいは膵切除後膵胃再建術後の閉塞性膵炎に対する外科的ドレナージの代替治療として,胃と膵管の間にステントを挿入するEUS下膵管ドレナージ術も行えるようになった.しかしながら,現時点では本治療に特化した治療デバイスは存在せず,今後の機器の開発が期待される.