Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム16 <診療に活かす> 健診・検診編:指導者が教えるここだけは見てほしいポイント

(S164)

胆嚢壁の肥厚像をどう評価するか?(びまん性と限局性に分類する)

How to evaluate the tickened gallbladder wall? -Diffuse or Localized-

岡庭 信司1, 岩下 和広2, 熊谷 金彦2, 宮下 昌徳2, 小林 真里恵2

Shinji OKANIWA1, Kazuhiro IWASHITA2, Kanehiko KUMAGAI2, Masanori MIYASHITA2, Marie KOBAYASHI2

1飯田市立病院消化器内科, 2飯田市立病院超音波室

1Department of Gastroenterology, Iida Municipal Hospital, 2Division of Ultrasound, Iida Municipal Hospital

キーワード :

胆嚢壁は高エコーの1層あるいは内腔より低高エコーの2層構造を呈することが多く,壁の厚さは3mm以下とされる.がん検診学会より提示されたカテゴリー分類では壁肥厚をびまん性と限局性に分類し,前者は体部肝床側にて壁厚>3mmとなるもの,後者は部分的に内側低エコーを認めるものとしており,鑑別診断を行う上でも有用である.1) びまん性壁肥厚浸潤癌,慢性胆嚢炎,胆嚢腺筋腫症(分節型やびまん型),膵胆管合流異常症に伴う過形成性変化などが含まれる.鑑別のポイントとしては,内部エコー,層構造の有無,粘膜面の性状,胆嚢の形状変化,石灰化像などの副所見の有無,経時変化などが挙げられる.・内部エコー胆嚢腺筋腫症はRASを反映する類円形の小嚢胞構造やコメット様エコーが肥厚した壁内に確認されることが多い.一方,浸潤癌では内部エコーが不均一となりRASを伴うことは稀である.黄色肉芽腫性胆嚢炎では不均一な高エコーを呈する壁内に,壁内膿瘍を反映する無エコーの嚢胞構造や肉芽腫を反映する高エコー領域を認めるため癌との鑑別が困難である.・層構造(低エコー帯)浸潤癌では不均一な厚さで層構造も不明瞭となり,外側高エコー層が消失あるいは不明瞭化している場合には肝臓などの周囲臓器に直接浸潤している可能性がある.一方,胆嚢炎における壁肥厚は比較的均一な厚さで層構造が保たれるのが特徴であり,特に多層構造を呈する低エコー帯の存在は急性胆嚢炎の診断価値が高い.膵胆管合流異常症に伴う過形成性変化でも外側高エコー層の保たれた比較的均一な丈の低い内側低エコー層の肥厚を認める.・粘膜面の性状(境界エコーの有無)癌は腫瘍表面が不整あるいは乳頭状を呈しているため,粘膜面と胆嚢内腔側との境界が不明瞭となり内腔側の境界エコーは認められない.一方,胆嚢炎では表面性状が比較的整であるため内腔側との境界は明瞭となり境界エコーを伴うことが多い.・胆嚢の形状変化分節型胆嚢腺筋腫症では胆嚢内腔は二房性となり砂時計様の形状を呈するが,胆嚢内腔の不自然な変形を認める例では浸潤癌による形状変化を考慮すべきである.・石灰化像などの副所見の有無無石性胆嚢炎の頻度は7%程度とされており,胆石や胆泥を認めない例では胆嚢癌や膵胆管合流異常症に伴う過形成性変化なども考慮すべきである.・経時変化胆嚢炎では炎症所見が改善するにつれ壁肥厚は消腿し,併存する胆嚢癌が明瞭となることがある.さらに,黄色肉芽腫性胆嚢炎では観察時期によって胆嚢壁のエコー輝度や内部構造が変化するため経時変化の評価は鑑別診断に有用である.2) 限局性壁肥厚表面型早期胆嚢癌,胆泥,慢性胆嚢炎などが含まれ,鑑別のポイントとしては内部エコー,粘膜面の性状,体位変換による可動性,ドプラ所見などが挙げられる.・内部エコー限局型あるいは底部型胆嚢腺筋腫症では肥厚した壁の内部にRASを反映する類円形の小嚢胞構造やコメット様エコーが確認されることが多い.・粘膜面の性状表面型早期癌はやや不整な表面構造を示す丘状隆起を呈し,内腔側の境界エコーは認めない.・体位変換による可動性胆嚢壁に密着し遊離しない限局性壁肥厚を認める場合には表面型早期癌を強く疑う.・ドプラ所見胆泥では病変内部に血流シグナルを認めないが,表面型胆嚢癌では腫瘤内部に樹枝状の血流シグナルを認めることがあり鑑別に有用である.以上,胆嚢壁肥厚につきびまん性と限局性に分けて解説した.いずれもRASを反映する類円形の小嚢胞構造やコメット様エコーの評価が重要であり,拡大観察や高周波プローブの併用が望ましい.