Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム16 <診療に活かす> 健診・検診編:指導者が教えるここだけは見てほしいポイント

(S163)

心:その息切れ・・・・年のせい?心不全?

Echocardiography: Is his/her dyspnea due to aging or heart faiure?

山田 博胤1, 2, 西尾 進2, 坂東 美佳1, 發知 淳子1, 林 修司2, 平田 有紀奈2, 佐田 政隆1, 2

Hirotsugu YAMADA1, 2, Susumu NISHIO2, Mika BANDO1, Junko HOTCHI1, Shuji HAYASHI2, Yukina HIRATA2, Masataka SATA1, 2

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【問診,視診,聴診】
心不全の息切れには,起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難など特徴的な症状があります.そのような症状があれば,まず心不全を疑い,エコー検査ではその原因や重症度を判断します.例えば,横になって検査をしていると息切れが増強する場合,肺性の息切れであれば安静にしていて急に悪化することはまずありませんから,心不全を疑って患者さんを座位にしてみましょう.それで息切れが治まるようなら心不全の疑いが濃厚です.また,検査室の電気を暗くする前に,少し患者さんを観察してみましょう.顔や手足のむくみ,頸静脈怒張などは右心不全の徴候です.忙しい健診でこそ,聴診器を一当てする余裕がほしいです.左心不全ではⅢ音やⅣ音による奔馬調律が聴取されます.心雑音の有無を確認しておけば,短い時間で的が絞れるエコー検査にもつながります.
【下大静脈の観察】
足が腫れていても,下大静脈が拡張しておらず,呼吸性変動が保たれていれば,まず心不全は否定的です.逆に,下大静脈径が2cm以上に拡大し,呼吸性変動がない場合には,中心静脈圧の上昇が示唆され,心不全を疑います.
【左室の評価】
左室のサイズ,左室肥大の有無,左室駆出率そして局所壁運動異常は,必ず評価するでしょう.左室が拡大して収縮力が低下した拡大不全心,あるいは,左室が肥大して弛緩とコンプライアンスが低下した肥大心は,いずれも心不全をきたす代表的な病態です.
【肺高血圧の有無と程度】
三尖弁逆流速波形を記録してピーク速度を計測します.3 m/s以上(健診で広く引っかけたい場合には2.8 m/s以上)であれば,肺高血圧の存在を疑います.このとき,右室流出路と肺動脈弁をカラードプラ法で観察して,モザイク血流がないことを確認しておかなければなりません.肺高血圧は心不全だけでなく肺性にも生じますから,肺高血圧があったからといって心不全とはいえませんが,心不全であった場合にはその重症度を反映しますし,治療効果判定のめやすにもなります.
【弁膜症の有無】
断層法で弁を観察すれば,僧帽弁狭窄と大動脈弁狭窄は引っかけられます.後は,連続波ドプラ法で弁口通過血流速度を計測して,重症度を判定します.僧帽弁逆流と大動脈弁逆流はカラードプラ法で検出します.いずれも,聴診器で雑音が聞かれない場合には,逆流ジェットのカラードプラが拡がっていても臨床的には問題がないことがほとんどです.また,僧帽弁逆流の場合には左房径,大動脈弁逆流の場合には左室径が拡大していない場合にはまず問題ありません.
【拡張能の評価】
左室拡張末期圧の上昇を検出することで,左心不全が証明できます.基本は僧帽弁口血流速波形の観察で,偽正常化パターンあるいは拘束型パターンでは左室拡張末期圧の著明な上昇が示唆されます.悩ましいときには,僧帽弁輪運動速波形を記録して,その拡張早期波高(e’)と僧帽弁口血流速波形の拡張早期波高(E)の比E/e’を計算します.その値が15以上であれば,左室拡張末期圧の上昇を疑います.