Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム11 <診療に活かす> ER編:指導医が教えるここだけは見てほしいポイント

(S160)

血管エコーを救急診療に活かす

Vascular ultrasonography in ER

松尾 汎

Hiroshi MATSUO

医療法人松尾クリニック

MATSUO MEDICAL CLINIC

キーワード :

ERにおいて血管エコーの必要な疾患は,大動脈疾患(急性大動脈解離:AAD,大動脈瘤破裂:AoA),脳梗塞:CVA,急性肺塞栓症:PE,深部静脈血栓症:DVT,急性動脈閉塞:AAOなど全身の急性血管疾患がある.症候は様々であり,意識障害(CVA,ショック,AADなど)から胸痛(急性冠症候群との鑑別を要するAAD,PE),背部痛(AAD,腎梗塞),腹痛(AoA,AAD,AAO),四肢痛(AAO,AAD,DVT),呼吸困難(PE+DVT),喀血(PE,高安動脈炎など),下血(AAO,AoA)など全身の臓器に関連する疾患の鑑別に挙げられる.それぞれに応じて何をどう診るか?要点のみを列挙して提示するので,是非緊急に備えて頂きたい.ERに備えるべき機器は汎用で,断層法とドプラ法(カラードプラを含む)が必要で,プローブもセクタ型,コンベックス型およびリニア型を揃える必要がある.更に循環器専門施設では経食道法も行えることが必要となる.症候によりアプローチの手順を設定しておき,手際よく鑑別することが求められる.緊急度を考慮して,先ずセクタで心臓のチェック(心嚢液貯溜,大動脈弁逆流,asynergy評価,右心負荷など),上行大動脈をチェックして腹部でAOAやIVCを観る.そして必要により,弓部や下行も観察する.腹部では腹部分枝の観察(AoA)と共に腹部臓器も評価したい.下肢では,動脈と静脈の両方の評価が必要である.これも症候から,その手順(大腿,膝窩,下腿の順)を決めるが,短時間にスクリーニングするように心がける.動脈の場合は塞栓症と血栓症の鑑別は動脈壁の状態から推察できることが多いが,不整脈や心疾患の合併も参考にする.動脈血栓も新旧の鑑別,さらに血管内治療の可否を推定することも可能である.静脈では,PEの際の塞栓源検索と下肢疼痛の鑑別ではアプローチを変え,DVT血栓の有無と共に先端部の確認と血栓の新旧も判定する.エコーは,ERでの検索後,治療経過や治療後の観察にも無侵襲故に有効である.なお,血管領域は,臨床医が検査に精通していれば問題はないが,そうでない場合は検査者(技師)と臨床側(医師)とのコミュニケーションが求められる領域である.