Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム
第38回日本超音波検査学会学術集会ジョイントプログラム これからの超音波検査士のあり方を考える

(S152)

超音波検査士の将来像

The future course of Sonographers

高橋 秀一

Shuichi TAKAHASHI

公益財団法人天理よろづ相談所病院臨床病理部

Department of Clinical Pathlogy, Tenri Hospital

キーワード :

【超音波検査士】
社団法人日本超音波医学会認定超音波検査士制度は,平成3年に制定された.その規則の第1条には,「この制度は,超音波医学の進歩発展に伴い,社団法人日本超音波医学会が超音波検査の優れた技能を有するコメディカルスタッフを専門の検査士として認定し,超音波医学並びに医療の向上を図り,もって国民の福祉に貢献することを目的とする.」と記載されている.今年の2月に第28回の認定試験が終了したが,受験者はこの規則を果たして読んでいるだろうか?大変失礼な私的感想だが,皆無に近いと思う.ただ単純に受験資格の時期に来たから,頑張って勉強して合格しよう.これが現状ではないでしょうか.もしも,「国民の福祉に貢献することを目的」として受験されているのであれば,理事長に変わって表彰してあげたい.
【超音波検査士の現状】
超音波検査は,端的にいうと診断を導くための適切かつ明瞭な画像を残す「画像検査」である.超音波検査の「質」は,技量と使用する装置条件に100%依存する.技量とは,鮮明な画像を得ること,得られた情報や所見から疾患等を推察することの2 点に絞られる.さらに,緊急性の有無や緊急事態への対応も求められる.超音波画像を的確に判断するには装置に精通し,患者ごとに適正に調整して画像を撮像することが必要である.これには,技術習得と知識が一定水準に達しているか否かを判断する材料が必要であり,その目標が「超音波検査士認定試験」である.認定試験に合格するとRegistered Medical Sonographer(略称RMS)の称号が与えられる.それは頂ではなく登山でいうと3合目到達と考えるべきである.ところが,合格で終わってしまっている検査士が多い.RMS取得後の教育指針がない現状では,個人の努力により日々の研鑽を積み,さらにスキルアップすべきである.
【超音波検査士の将来像】
RMSを取得した技師は,勤務先の状況と根本となる本人の素質やモチベーションによるが,着実に成果を上げる技師とそうでない技師が確実にいる.これらを正確に評価する尺度はないが,2006年日本心エコー図学会は専門技師制度を,社団法人日本超音波医学会は2012年に指導検査士制度を敷いた.これらは,現状のRMSの上位となる資格であり前述のスキルアップを現実化したものと考える.検査精度を一定水準に保っていれば,臨床側の要望に応え診療に寄与できる.すなわち上級技師のみで検査を行えば,精度自体は担保される.果たしてそうであろうか.近年,医療過誤による諸問題はこの部分でも如実に現れている.患者からのクレームを受ける者はある程度限られている.何が足りないかというと,接遇術であろう.検査は患者入室から退室までと言うが,難題に遭遇したとたん,「頭が真っ白」という若手技師が多い.すぐに誰か助けにくることは,当然であるがそれを後できちんと順序立てて後進に教えて伝えることが指導者の役務と考える.最後に,初心者から3年目までの新人技師はRMSが育て,RMSは2回の資格更新を済ませてからは指導資格の取得に臨んで欲しい.そして指導技師は,本やマニュアルには無い(書けない)部分の教育を自施設内だけではなく,Super Sonographerぶりを全国展開する.「患者を見て,会話を通してその感性をもって接しながら超音波画像を見る.」そのような,3階建て構造の超音波検査士,演者が思う将来像である.