Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:循環器領域Ⅱ

(S591)

大動脈縮窄症術後のグラフト狭窄と左室機能;遠隔期の一例

A case with bypass graft stenosis and left ventricular function after surgical treatment of aortic coactation;a long-term follow up

佐野 裕美1, 永山 加奈恵1, 伊藤 美貴1, 狩野 市子1, 原 隆司1, 小池 夏葉2, 藤田 悦子2, 高良 綾子2, 永田 まこと2, 石塚 尚子2

Hiromi SANO1, Kanae NAGAYAMA1, Miki ITO1, Ichiko KARINO1, Takashi HARA1, Natsuha KOIKE2, Etsuko FUJITA2, Ayako TAKARA2, Makoto NAGATA2, Naoko ISHIZUKA2

1東京女子医科大学附属成人医学センター臨床検査室, 2東京女子医科大学附属成人医学センター循環器内科

1Clinical Laboratory, Tokyo Women’s Medical University Institute of Geriatrics, 2Department of Cardiology, Tokyo Women’s Medical University Institute of Geriatrics

キーワード :

症例は70歳女性.
【主訴】
特になし.
【既往歴】
特記すべきことなし.
【現病歴】
生後2ヶ月で嘔吐,近医受診にて心雑音を指摘された.心疾患についての詳細は不明.小児期成長は問題なし.20代の健康診断時に,高血圧を指摘されていた.32歳時,無月経にて婦人科を受診したところ,高血圧のため内科を紹介された.初めて下肢の血圧測定にて大動脈縮窄症が疑われ,大学病院を紹介入院となった.血圧:上肢(右)208/76mmHg,下肢(右)106mmHg/(触),血管造影にて大動脈弓部から下行大動脈移行部に狭窄を認め,大動脈縮窄症(post ductal type)と診断された.バイパスグラフト(左鎖骨下→下行大動脈)術を施行.上下肢の血圧差は改善し,投薬なしで経過観察となった.46歳・47歳時に感染性心内膜炎を発症し,合併症として肺塞栓,右脳梗塞を起こした.この時心臓超音波検査にて,グラフトの血流は2.0m/secであった.58歳時に心室中隔欠損(Ⅰ)を指摘され,以後外来で定期的に経過観察されていた.徐々に血圧が上昇し60歳頃より降圧剤を服用するようになった.今回(70歳時)施行した心臓超音波検査にて,グラフト部分に5.3m/secの加速血流を認めた(図右).描出が困難なため,右側臥位にてアプローチしたところ,グラフト接合部(左鎖骨下)に可動する5mm大の石灰化様高輝度エコーが描出された(図左).徐々に左室肥大は進行し,心のう液貯留も認められるようになった.左室収縮能は正常であったが,E/e’は約4年間で14から26と拡張能の低下を認めた.
【考察】
遠隔期に上肢高血圧のため,afterload mismatchを来たしていると考えられた.また,頚部の血管の分岐部は,わずかな頭位変換により見え方が変わるため,本例のような特殊な術式の場合は,体位・頭位を工夫することが必要であると考えられた.
【結語】
大動脈縮窄症術後の遠隔期に,心臓超音波検査にてグラフト狭窄や心機能の推移を観察し得た一例を報告する.