Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:循環器領域Ⅱ

(S591)

感染性心内膜炎による大動脈弁穿孔の診断に三次元経食道心エコーが有用であった1例

A case of aortic valve perforation due to infective endocarditis was diagnosed by three dimensional transesophageal echocardiography

井上 歩1, 池田 昌絵2, 田仲 里衣1, 杉原 悦子1, 佐々木 英也1, 永禮 旬1, 竹本 俊二2, 梶川 隆2

Ayumi INOUE1, Masae IKEDA2, Rie TANAKA1, Etuko SUGIHARA1, Hidenari SASAKI1, Hitoshi NAGARE1, Syunji TAKEMOTO2, Yutaka KAJIKAWA2

1独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター臨床検査科, 2独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター循環器内科

1Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Fukuyama Medical Center, 2Division of Cardiology, National Hospital Organization Fukuyama Medical Center

キーワード :

【症例】
83歳 女性.
【主訴】
突然の呼吸困難,発熱
【既往歴】
19年前 右大腿骨頚部骨折手術,15年前 右人工骨頭置換術施行
【現病歴】
大腿骨頚部骨折術後で当院整形外科通院中であった.入院1週間前から発熱・右股関節痛のため歩行不能となり,人工骨頭感染症の疑いで当院整形外科へ入院.入院後股関節痛は消失したが,38度の発熱,CRP25.mg/mlと上昇を認めており,尿検査にて白血球(2+),腹部単純CTの所見と併せて腎盂腎炎と診断され,抗生剤加療(イミペネム/シラスタチンを使用)が開始された.静脈血の培養よりStreptococcus agalactiae (B群レンサ球菌)が培養され,腎盂腎炎による敗血症と診断された.その後も抗生剤投与を継続するも発熱が続いていた.入院後徐々に貧血が進行したため,当院内科にて貧血精査目的で上部内視鏡検査・下部内視鏡検査を施行した.検査の結果,明らかな出血源は認められず,検査中はバイタルに問題なく終了した.病室に帰室し,トイレ歩行後,突然呼吸困難を訴えSpO2 72%に低下,呼吸困難の原因精査目的で,心エコーを行うこととなった.
【整形外科入院時検査所見】
血液検査WBC 13.5x103/μ, Hb 9.8g/l, CRP 25.67mg/mlSAA 2564.6μ/ml,クレアチニン1.06mg/dl,BUN 23mg/dl尿検査にて白血球(2+),入院時の関節液・尿の培養は陰性.
【初回心エコー時身体所見】
身長149cm,体重44.0kg,胸部聴診上Ⅳ音,胸骨左縁第3肋間に最強点を持つ拡張期雑音4/6度を聴取
【経胸壁心エコー所見】
LVDd 56.7mm, LVDs 39.1mm, EF 58.1%, IVC 23.5/21.5mm AR Ⅳ/Ⅳ, TRmoderate,推定肺動脈圧93mmHg無冠尖に3.9×11mmの可動性のある結節性病変を認め,vegetationと考えられた.無冠尖の穿孔も疑われたが,評価困難であった.
【三次元経食道心エコー所見】
大動脈弁無冠尖に15.6×7.12mmのvegetationと瘻孔を認めた.大動脈弁輪に異常なし.その他の部位にvegetationは指摘されなかった.
【経過】
発症状況から当初は急性肺塞栓が疑われ,造影CTが施行されたが急性肺塞栓は否定的であった.CT上両側胸水・肺うっ血を認め,心エコーの結果から急性severe ARによる急性心不全と診断.ICUに入室し,心不全に対する薬物加療が開始された.弁穿孔の可能性が考えられ,ICU入室翌日にバイタル安定し,三次元経食道心エコーを施行した.結果,大動脈弁無冠尖に15.6×7.12mmのvegetationとそれに伴う瘻孔を認めた.推定肺動脈圧は薬物加療にて55mmHg程度に改善したが,経過観察するも左室流入血速波形は拘束型から改善せず,これ以上の心不全コントロールは困難と考えられ,ICU入室第4病日心臓血管外科のある施設へ手術目的に転院.大動脈弁置換術(生体弁)が施行された.術中所見にて三次元経食道心エコーと同様のvegetationとそれに伴う弁穿孔が認められた.
【結語】
本症例は腎盂腎炎による敗血症を契機に感染性心内膜炎を発症し,大動脈弁穿孔による急性severeARを生じ,突然の呼吸困難・急性心不全をきたしたものと考えられた.大動脈弁形態の詳細な観察に三次元経食道心エコーが有用であった.