Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:循環器領域Ⅱ

(S590)

三相性の高度左室流入障害を示し,術後に病態が著明に改善した脱出性左房粘液腫の一例

Prolapsing Left Atrial Myxoma Showing Severe Inflow Disturbance with Triphasic Pattern and Marked Improvement of Hemodynamics After Operation

山本 裕介1, 福田 信夫2, 大野 孔文3, 小島 義裕3, 井端 智裕3, 横井 靖世1, 渡部 敬二1, 田村 禎通3

Yusuke YAMAMOTO1, Nobuo FUKUDA2, Yoshifumi OONO3, Yoshihiro KOJIMA3, Tomohiro IBATA3, Yasuyo YOKOI1, Keiji WATANABE1, Yoshiyuki TAMURA3

1国立病院機構善通寺病院臨床検査科, 2国立病院機構善通寺病院臨床研究部, 3国立病院機構善通寺病院循環器内科

1Medical Laboratory, National Hospital Organization Zentsuji Hospital, 2Department of Clinical Research, National Hospital Organization Zentsuji Hospital, 3Department of Cardiology, National Hospital Organization Zentsuji Hospital

キーワード :

【はじめに】
粘液腫は心臓腫瘍全体の30%と最も多く,成人の原発性良性腫瘍の50%を占める.発生部位は左房が最も多く,腫瘍の大きさによっては房室弁の流入障害を惹起することがある.今回我々は,三相性の高度左室流入障害を示し,手術により病態が著明に改善した脱出性左房粘液腫の一例を経験した.
【症例】
74歳女性.2011年10月初旬より労作時呼吸困難が出現し,10月17日当院内科を受診.心雑音およびBNP著明高値(1308pg/ml)を認めたことから心エコー検査を依頼された.心エコー検査で左房内腫瘍を認めたため精査加療目的で入院となった.
【心エコー検査所見】
腫瘍は40×30mm大で,心房中隔に付着しているように観察され,心周期に一致し形を変え僧帽弁口へ陥入し,僧帽弁通過速度2.0m/s,経僧帽弁平均圧較差13mmHgと高度の僧帽弁口狭窄(MS)を呈していた.左室流入波形は拡張早期のスパイク波とその後のMS様波形によって特徴的な三相性パターンを呈しており,心音図ではtumor plop soundを認めた.また,三尖弁逆流速度から算出した推定肺動脈圧は66mmHgと中等度の肺高血圧を認めた.左房内腫瘍の僧帽弁陥入による重度の僧帽弁狭窄との診断で準緊急的に手術を予定した.
【手術・経過】
10月24日に左房内腫瘍摘出術が施行された.腫瘍は卵円窩より尾側で下壁寄りの心房中隔に付着していた.腫瘍摘出後,心房中隔欠損パッチ閉鎖術を施行,術後に提出された病理診断では左房粘液腫であることが確認された.11月2日に施行した心エコー検査では僧帽弁狭窄は消失,僧帽弁逆流は減弱し,推定肺動脈圧は35mmHgと肺高血圧も改善した.
【まとめ】
左房腫瘍の心エコー検査では,腫瘍の大きさ,内部エコー,可動性,茎の長さや付着部位等の評価に加え腫瘍が脱出性か非脱出性かの鑑別や血行動態異常の程度を確認する必要がある.今回我々は,左房粘液腫の僧帽弁口への陥入により三相性の左室流入パターンを呈した高度血行動態異常が,手術により著明に改善した症例を経験したので報告する.