Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:血管および表在領域

(S585)

頸動脈エコーが診断に有用であった大動脈炎症候群の一例

A case of aortitis syndrome in a young man, in which carotid Ultrasonography was a useful approach for the diagnosis

山本 有季乃1, 荒木 みどり2, 藤村 光則2

Yukino YAMAMOTO1, Midori ARAKI2, Mitsunori FUJIMURA2

1高松市民病院検査技術科, 2高松市民病院循環器科

1Division of laboratory, Takamatsu Municiple hospital, 2Division of cardiology, Takamatsu Municiple hospital

キーワード :

【症例】
30代男性
【既往歴】
潰瘍性大腸炎(18歳)
【家族歴】
特記事項なし
【主訴】
立眩み
【現病歴】
10年前より椅子から立ち上がり数m歩くと眼の前が暗くなり,気を失いそうになることが日常的にみられていた.また7年程前から職場検診時に自動血圧計で血圧測定できないことが度々あった.2011年7月頃より強い立眩みが頻回におきるようになり近医受診,精査のため当院循環器科紹介された.起立性低血圧があり昇圧剤内服で症状は軽減したので,内服継続で経過観察していたところ,同年10月右眼のみの一過性の視力低下の訴えあり,精査目的で入院.
【現症】
身長175cm,体重54kg,BMI 17.1,血圧91/57mmHg,脈拍107/分・整.頸部血管雑音聴取,胸部左縁第2肋間で雑音聴取,腹部血管雑音なし.両側肘動脈触知可,両側橈骨動脈触知不可.
【心電図所見】
洞調律,心拍数101/分,ST-T変化なし.
【血液検査所見】
WBC 9.5×103/μl(好中球 69.3%,リンパ球 20.6%),RBC 456×104/μl,Plt 31.6×104/μl,Fib 446mg/dl,CRP 2.4mg/dl,赤沈 16mm/hr.IgG,IgA,C3,C4 正常範囲内.
【心エコー検査所見】
左室拡大なし,収縮能正常.大動脈径拡大なし.大動脈弁逆流なし.
【頚動脈エコー所見】
右総頚動脈起始部に瘤あり,瘤遠位部に高度狭窄あり.右総頚動脈に全周性の中内膜肥厚(マカロニサイン)を認める.右内頚動脈,右外頚動脈に中内膜肥厚認めず.右鎖骨下動脈に内膜肥厚認め,遠位部で閉塞.左総頚動脈は起始部より閉塞.左頚動脈洞と左内頚動脈は開存し,順行性の血流を認める.また,左外頸動脈の逆行性の血流が頸動脈洞に向かう様子が観察される.左鎖骨下動脈は椎骨動脈分枝後より閉塞.両側椎骨動脈は径の著明な拡張と加速血流を認める.両側頚部全体に側副血行路と思われる小さな血管を多数認める.
【MRA,3D-CTA所見】
頸部はエコーと同様の所見.上行大動脈から弓部にかけて大動脈壁の肥厚を認める.胸部下行大動脈,腹部大動脈,腸骨動脈以遠に壁肥厚は認めず.
【眼底所見】
花冠状動静脈吻合認めず.
【臨床経過】
画像診断より大動脈炎症候群(弓分枝閉塞)と診断,ステロイドホルモン治療を開始し,CRPは陰性化.一過性黒内障はその後出現していないが,立眩みは変わらず,ステロイド開始後1ヵ月の時点でエコー,CTで認めた血管壁の肥厚などの所見も変化なし.現在外来経過観察中である.
【考察】
大動脈炎症候群は,大動脈とその主要分枝および肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞または拡張病変をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患で,狭窄ないし閉塞をきたした動脈の支配臓器に特有の虚血障害,あるいは拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなすとされている.病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため,多彩な臨床症状を呈する.10万対3.3人の割合でみられ,男女比は1:9で女性に多い.本症例は若年男性で,立眩みを主訴とし,右眼の一過性黒内障があり頸部血管雑音を聴取したため,頚動脈エコー施行したところ,右総頸動脈に特徴的なマカロニサインを認め,さらに両側鎖骨下動脈閉塞,右総頚動脈狭窄,左総頚動脈閉塞を認めたため,大動脈炎症候群の診断に至った.頸動脈エコーが大動脈炎症候群の診断に有用であった.