Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:腹部領域

(S583)

膵炎による腫瘤様病変8例の造影超音波所見

Contrast-Enhanced Ultrasonographic findings of mass-forming pancreatitis

安田 真由美1, 村島 直哉2, 鶴岡 尚志1, 斎藤 菜々子1, 沼倉 陽子1, 畑岡 麻子1

Mayumi YASUDA1, Naoya MURASIMA2, Hisasi TURUOKA1, Nanako SAITOU1, Youko NUMAKURA1, Asako HATAOKA1

1国家公務員共済組合連合会 三宿病院臨床検査科, 2国家公務員共済組合連合会 三宿病院消化器内科

1Department of physiology, Misyuku Hospital, 2Department of Gastroenterology, Misyuku Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波Bモードで膵臓に低エコーの腫瘤様病変を指摘し,腫瘤性病変との鑑別を目的にレボビスト造影を行った8症例より得られた知見について報告する.
【対象】
対象は2006年から2011年までに検査を行った症例のうち,超音波検査施行時には確定診断がついていなかった8症例で,自己免疫性膵炎2例,慢性膵炎5例,膵癌に伴う閉塞性膵炎1例である.
【方法】
超音波診断装置は東芝社製SSA-770Aを用いた.探触子はコンベックスPVT-375BT.本装置に搭載されているレボビスト造影モードを使用した.レボビスト7 ml (濃度300 mg/ml) を肘静脈からbolus 注入(1 ml/秒) し,引き続き生理食塩水10 ml を注入してルート内の造影剤を速やかに注入した.レボビスト注入直後からMI=1.6にて連続送信(4fl/秒)し,約10〜40秒間,連続送信と同時に観察断層を用手的にぶらすことで間欠送信を行い,この間の腫瘤の染影を観察した.
【症例1 自己免疫性膵炎】
心窩部痛により腹部超音波検査を施行した.膵体部から尾部にかけて100×30mmの低エコーの腫大を認め,表面は凹凸不整,境界は比較的明瞭,主膵管は腫大部で狭細像を示した.
【症例2 自己免疫性膵炎】
糖尿病が急激に悪化し腹部超音波検査施行.鈎部と尾部に49×33mmと66×26mmの腫瘤様の低エコー域が認められ,主膵管内に膵石エコーは描出されなかった.生化学検査ではアミラーゼ 230 IU/l リパーゼ 842 IU/l CA19-9 249.8 U/mlであり,IgG4が470 mg/dlと高値であった.
【症例3 慢性膵炎】
胆石の経過観察中に施行した腹部超音波検査において,膵尾部に22×15mmの低エコー腫瘤様病変を認めた.主膵管拡張はなく,血液生化学所見においても異常はなかった.
【症例4 慢性膵炎】
糖尿病の経過観察中にCA19-9が257 U/mlであったため,腹部超音波検査を施行した.膵尾部に膵石と52mm 長の低エコー域を認めた.
【症例5 慢性膵炎】
上腹部痛にて腹部超音波を施行.膵頭部に40 mm大の腫大を認め膵石も多数描出された.膵管は蛇行し4.2 mmと拡張も見られた.
【症例6 慢性膵炎】
上腹部痛にて来院.同日の血液,生化学所見はWBC11500 /μl CRP 14.0 mg/dl アミラーゼ 593 IU/l リパーゼ 464 IU/lと高値であったため急性膵炎を疑い腹部超音波検査施行となった.膵臓は全体に腫大し辺縁は凹凸が目立つ形状であった.膵尾部に40×28 mmの低エコーの腫瘤様の病変を認め,膵周囲にわずかな液体貯留が認められた.
【症例7 慢性膵炎】
アルコール性慢性膵炎急性憎悪で入院となった.腹部超音波では実質は菲薄で体部に結石を認め,その周囲に29×25 mm,13 mmの境界明瞭で不整形の低エコー域を認めた.
【症例8 膵癌に伴う閉塞性膵炎】
右下腹部の圧痛があり腹部超音波検査を施行した.膵体尾部移行部に50〜60 mm長の低エコー域があり内部に拡張気味の主膵管を認め,限局性の膵炎を疑ったが,主膵管が頭部で途絶した様に見えこの部位に小膵癌がある可能性も否定できなかった.当日の生化学検査データはアミラーゼ 93 IU/l リパーゼ 154 IU/l CA19-9 31.5 U/mlであった.
【結語】
膵炎に見られた腫瘤様病変8例について造影超音波検査を施行した.Bモードで腫瘤様病変として映った部分は,自己免疫性膵炎,慢性膵炎,膵癌に伴う閉塞性膵炎,いずれにおいても造影上は腫瘤部と非腫瘤部の膵実質は等エコーを呈し,境界もなかった.この所見は膵癌を含めた他の膵腫瘤とは異なる造影所見であり,レボビスト造影はこれらの病変と膵癌との鑑別に有用と考えられた.