Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:腹部領域

(S583)

非外傷性腎被膜下血腫を伴った腎盂癌の一例

Renal pelvic carcinoma with nontraumatic subcapsular renal hematoma: A case report.

金久保 雄樹

Yuji KANAKUBO

天王台消化器病院放射線科

Department of Radiology, Tennohdai Digestive Disease Hospital

キーワード :

【はじめに】
非外傷性に腎が自然破裂することは比較的稀である.その原因は悪性腫瘍30〜35%,良性腫瘍(おもに腎血管筋脂肪腫)25〜30%,炎症性疾患5〜10%と報告されている.悪性腫瘍の多くは腎細胞癌であり,腎盂癌は少ない.今回我々は自然破裂をきたし被膜下血腫を認めた腎盂癌の1例を経験したので報告する.
【症例】
70歳代女性.既往歴は特記事項なし.現病歴は数日前より特に誘因なく右腰痛が出現し,近医を受診.その後痛みの部位は右下腹部に移行し,当院紹介受診となった.身体所見では右下腹部に圧痛があった.血液検査ではCRPは13.09mg/dlと上昇し,赤血球369万/μl,Hb11.0g/dl,Ht33.6%と軽度低下を認めた.
【腹部超音波所見】
右腎腹側の上〜下極にかけて,腎実質を圧排する凸レンズ状の高エコー域を認めた.右腎中央付近には2×3.8(腹背×頭尾方向) pの腹側への腫瘤様突出を認め,突出部は類円形で薄い辺縁低エコー帯と側方陰影を伴っていた.レンズ状の高エコー域と腫瘤様突出は連続し,内部は複数の点状高エコーを伴う不均一な高エコーであった.ドプラでは僅かな点状の血流シグナルを認めた.これらの所見より,腎腫瘍の破裂による右腎被膜下血腫を疑った.
【腹部造影CT所見】
非造影で高・低吸収が混在する被膜下血腫を認めた.被膜下血腫と連続する腫瘤様突出も高・低吸収が混在していた.脂肪成分は認めなかった.造影により中央下極よりに楔状の造影不良領域を認めた.腫瘤様突出の一部に点状の濃染を認めた.
【経過および病理診断】
抗生物質投与後2週間で炎症反応も正常値になり痛みも消失,退院後に外来経過観察となった.入院中に超音波検査とCT検査を複数回行ったが,腫瘤様突出と被膜下血腫に著変は認めなかった.外来経過観察は諸事情により未受診であった.3ヶ月後に血尿を主訴に受診した.右腎腫瘤は増大し被膜外に進展,傍大動脈リンパ節転移,腎静脈・下大静脈浸潤,転移性肺腫瘍を認めた.上行結腸は腫瘤と接しており直接浸潤を疑った.右腎・副腎摘出,右半結腸切除術が施行され,病理組織所見は腎盂癌(移行上皮癌), pT4であった.
【考察】
病理所見では腎実質内に広範に浸潤し,腎輪郭から突出した腎盂癌であった.手術の3か月前の超音波検査ではCECは血腫により圧排・扁平化していたが,腎盂腎杯の拡張や腎盂内腫瘤は認めなかった.腫瘤様突出は辺縁低エコー帯を有し血流シグナルが僅かであった所見から,乳頭状腎細胞癌などの乏血流性腎癌が鑑別に挙がった.また類円形で側方陰影を伴う所見より,出血嚢胞も鑑別に挙がった.内部エコーレベルはCECより低く,腎血管筋脂肪腫は否定的であった.被膜下血腫の不均一な高エコー域は腫瘤様突出に連続しており,血腫により腫瘤本来の像がマスクされていたため腫瘍の診断は困難であった.腎細胞癌などの自然破裂を血腫存在下に正確に診断することは難しく,CT検査によっても診断率は低いとされている.腎の自然破裂は稀だが,原因として悪性腫瘍が占める割合は高く,腎自然破裂症例では腎細胞癌・腎盂癌の可能性を念頭に報告する必要がある.
【まとめ】
非外傷性被膜下血腫を伴った腎盂癌の1例を,超音波所見を中心に報告した.