Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:腹部領域

(S582)

孤立性肝結核腫の1例

A case of Solitary Hepatic Tuberculoma

鈴木 基郎1, 秋葉 恵美子1, 渡邉 康代1, 佐藤 由美子1, 西野 洋2, 水谷 正彦3, 若杉 聡4, 栃谷 四科子5, 平田 信人5, 石田 秀明6

Motoo SUZUKI1, Emiko AKIBA1, Yasuyo WATANABE1, Yumiko SATOU1, Hiroshi NISHINO2, Masahiko MIZUTANI3, Satoshi WAKASUGI4, Shinako TOCHITANI5, Nobuto HIRATA5, Hideaki ISHIDA6

1社会福祉法人太陽会 安房地域医療センター臨床検査室, 2社会福祉法人太陽会 安房地域医療センター総合診療科, 3社会福祉法人太陽会 安房地域医療センター外科, 4医療法人鉄焦会 亀田総合病院消化器診断科, 5医療法人鉄焦会 亀田総合病院消化器内科, 6秋田赤十字病院消化器科

1Division of Clinical Laboratory, Awa Regional Medical Center, 2Department of General Medicine, Awa Regional Medical Center, 3Department of Surgery, Awa Regional Medical Center, 4Department of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center, 5Department of Gastroenterology, Division of Internal Medicine, Kameda Medical Center, 6Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【症例】
42歳,女性.
【主訴】
体重減少,右季肋部痛
【家族歴】
母方の叔父が肺結核で手術.
【既往歴】
8歳時,虫垂炎で手術.
【現病歴】
2008年の健診で白血球増加を指摘されていたが,精査を受けなかった.その後1年間で12kgの体重減少があり,2009年の健診で再度,白血球増加と貧血を指摘され,精査目的に当院総合診療科受診.腹部超音波検査で肝S8とS4に腫瘤を指摘された.AFPなどの腫瘍マーカーの上昇なく,HBVマーカー,HCVマーカー陰性,超音波検査上も肝細胞癌,肝内胆管癌,転移性肝癌などの悪性腫瘍として典型的でなかった.炎症性偽腫瘍を疑い,経過観察された.しかし,4ヶ月経過しても腫瘤は縮小せず,右季肋部痛が出現したため,当院消化器内科受診となった.
【入院時検査所見】
白血球9200/μl,赤血球410万/μl,Hb10.6g/dl,Ht33.1%,Plt47.3万/μl,AST 14 IU/L,ALT 8IU/L,γ-GTP 98IU/L,ALP 426IU/L,LDH 158IU/L,CRP9.0mg/dl,ESR 69mm/30min,133mm/1hr,HBs-Ag(-),HCV-Ab(-),AFP1.9ng/ml,PIVKA2 10.0mAU/ml,CA19-9 2.8U/ml,CEA 0.9ng/ml
【腹部超音波検査所見】
肝S8に52mm×52mmの分葉状腫瘤を認めた.境界は不明瞭で,内部は周囲肝とくらべて低エコーの部分から軽度高エコーの部分が混在し,不均一だった.所々に小類円形の極低エコー像を認めた.後方エコーは不変だった.境界部低エコー帯や外側陰影は認めなかった.カラードプラ検査では血流シグナルを認めなかった.S4にも17mmの類円形腫瘤像を認めた.境界はおおむね明瞭だが輪郭に軽度の凹凸を認めた.内部は不均一だった.
【腹部dynamic CT】
単純CTでは,境界不明瞭な多結節状低エコー腫瘤像を呈した.造影動脈相では腫瘤境界部が造影されたが,中心部は造影不良だった.門脈相,平衡相で徐々に境界部から辺縁部へ造影される部分がひろがったが,中心部に造影不良域が残存した.
【腹部MRI検査】
T1強調像で腫瘤は筋肉より軽度低信号,T2強調像では筋肉より軽度高信号で,境界部から周辺部が高信号だった.明らかな脂肪抑制効果を認めなかった.
【経過】
肝内胆管癌,炎症性偽腫瘍などが考えられたが,確定診断のために肝生検を施行した.生検組織には線維性肉芽組織を認めたが乾酪壊死や類上皮肉芽腫は認めず確定診断には至らなかった.経皮的肝生検の際に採取されたごく少量の膿汁を細菌培養検査・結核菌検査に提出したところ,Ziehl-Neelsen染色 陰性,一般細菌培養陰性であったが,TB-PCR 陽性,後に抗酸菌培養にてMycobacterium tuberculosis が同定された.またツベルクリン反応 中等度陽性(硬結8×9mm,発赤32×23mm ),QuantiFERON-TB2G 陽性であった.また他臓器病変検索目的で施行した胸部CTでは右上葉に径10mmほどの空洞性病変を認めた.喀痰培養で結核菌が検出され,肺結核と診断された.INH・RFP・EB・PZAによる治療を行い,1年間経過した時点で血液検査所見は正常化し,肝腫瘤もCTで縮小し,瘢痕化した.
【考察および結語】
肝結核は孤立性と粟粒性に分類されるが,その大部分は粟粒性である.本邦での孤立性肝結核は1984年以降の報告例は本症例をふくめてわずか35例である.近年は結核が減少傾向にあるため,肝結核も経験されることが少なくなった.肝結核のなかで孤立性肝結核は経験されることが稀であり,その画像所見に対する知見は少ない.その超音波検査所見を検討すると,21例が低エコー性腫瘤を呈し,高エコー性腫瘤が2例だった.石灰化を呈するものは5例,辺縁高エコーを呈するものは1例だった.詳細な超音波所見を記載した報告は少なく,今後はBmode所見やカラードプラ所見だけでなく,造影超音波所見を加味した検討が望まれる.