Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:腹部領域

(S582)

腹部超音波検査が発見のきっかけとなった2歳児の膵胆管合流異常症

Anomalous arrangement of the pancreaticobiliary ducts of the 2 years old child that abdominal ultrasonography led to the discovery

吉村 昭宏1, 岡成 和夫2, 八木 実3, 深堀 優3, 升井 大介3

Akihiro YOSHIMURA1, Kazuo OKANARI2, Minoru YAGI3, Suguru FUKAHORI3, Daisuke MASUI3

1大分県済生会日田病院臨床検査部, 2大分県済生会日田病院小児科, 3久留米大学小児外科

1Clinical Laboratory Department, Saiseikai Hita Hospital, 2Pediatrics, Saiseikai Hita Hospital, 3Pediatric Surgery, Kurume University

キーワード :

【症例】
2歳女児,2011年6月20日腹痛と嘔吐を認め近医受診,点滴と整腸剤にて経過観察中であったが症状回復せず7月2日に当院受診した.血液検査ではALT 35U/L,ALP 679U/L,AMY 1133U/L,PAMY 1113U/L LIP 2627U/L,WBC 15300,CRP 0.17mg/dLであった.
【画像検査所見】
腹部超音波:左右肝内胆管,総肝管,総胆管は10mmφに拡張していた.膵頭部で膵管は総胆管と合流していた.十二指腸乳頭部より共通管の長さを推測すると8.9mmであった.共通管の内部には結石,もしくは粘液魂様のエコーを認め体位変換で移動が確認された.膵実質は弾力性が低下しており炎症による変化が考えられた.以上より先天性総胆管拡張症,膵胆管合流異常による急性膵炎と考えた.MRI:肝内胆管,総胆管は11mmφに拡張していた.下部胆管内部には2から4mmの結石が散見された.十二指腸乳頭部から膵管,胆管合流部までの長さは11mmと推測された.CT:MRIで指摘された下部胆管内の結石は確認できず,X線陰性結石と考えられた.他は前記の画像所見と同様であった.
【手術】
術中胆嚢管内にウログラフィンを注入し胆管造影施行.左右肝管拡張と蛇行した膵管を認め膵胆管合流部の描出は良好であった.肝内胆管に狭窄部なし.膵管合流型の異常を確認した.総胆管は合流部直上で切離.肝管空腸吻合をおこなった.病理所見では膵内胆管,総肝管,胆嚢管,総胆管,胆嚢のいずれにも異型細胞は認めなかった.
【考察】
通常,胆管と膵管は括約筋の作用が及ぶ十二指腸壁内で合流し共通管を形成する.膵胆管合流異常症は十二指腸壁外で合流する先天性の奇形で合流部に括約筋の作用が及ばないため膵液と胆汁が逆流し胆管炎,膵炎,胆石などの病態を引き起こす.胆管拡張を伴うものは先天性総胆管拡張症と呼ばれる.小児のうちは腹痛,嘔吐,黄疸といった症状が発生するがしばらくすると自然に収まることが多い.また症状を繰り返すという特徴がある.合流異常を放置しておくと胆嚢や胆管に癌が高率に発生することが知られており,一般の胆道癌より好発年齢が約10歳若く,正常人に比べ発生率は10から30倍高い.今回我々はルーチン検査として行われた腹部超音波で,先天性総胆管拡張症,膵胆管合流異常を指摘することができた.合流異常は壁外で合流していることを証明することが必要である.(共通管が成人で10mm,小児で4mmと規定することが多い)しかし,超音波検査で十二指腸壁端を確定することは困難である.そのため左下側臥位でトライツ靭帯で固定された十二指腸(ガス,腸液の移動)から重力方向に下垂する膵実質内で合流するまでの共通管の長さを計測.8.9mmと推測しえた.臨床症状と体位変換(左下側臥位)を駆使した腹部超音波検査が診断の発端となり早期の手術を施行できた症例であった.