Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
体表臓器:体表臓器

(S575)

唾液腺領域に発生したリンパ増殖性疾患の超音波所見

Ultrasonographic findings of lymphoproliferative disease in major salivary glands:A report of three cases

武輪 恵1, 平井 都始子2, 齊藤 弥穂2, 山下 奈美子2, 吉田 美鈴2, 森本 由紀子2, 丸上 永晃2, 高橋 亜希1, 伊藤 高広1, 吉川 公彦1

Megumi TAKEWA1, Toshiko HIRAI2, Miho SAITO2, Namiko YAMASHITA2, Misuzu YOSHIDA2, Yukiko MORIMOTO2, Nagaaki MARUGAMI2, Aki TAKAHASHI1, Takahiro ITO1, Kimihiko KICHIKAWA1

1奈良県立医科大学放射線科, 2奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部

1Department of Radiology, Nara medical University, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
他の領域と同様,唾液腺領域においても,一般的に,悪性腫瘍は超音波所見上,不整な形状で,毛羽立ったような不整な輪郭を示し,不均一な低エコーを示すことが多い.しかし,悪性リンパ腫などのリンパ増殖性の疾患では,均一で境界明瞭な良性病変と類似する形状を示したり,唾液腺が既存の構造を維持した状態で腫大して,炎症や自己免疫疾患などの非腫瘍性病変と類似する形状を示したりすることがあり,診断上注意が必要である.今回私たちは,唾液腺に病変のある悪性リンパ腫2例および良性のリンパ増殖性疾患であるhyaline-vascular typeのCastleman病1例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.
【症例1】
40歳代,女性.主訴:左下顎部腫脹,現病歴:2008年3月に左下顎部の腫れを自覚したが,痛みがなかったので放置.同年7月に近医受診し,精査加療目的に奈良医大口腔外科紹介受診.身体所見:左下顎部に9×6cmの弾性硬,可動性のない腫瘤を認める.超音波所見:左顎下腺領域に分葉状の腫瘤を認める.境界明瞭で均一低エコーを示す.カラードプラ法で内部に直線的に流入する豊富な血流表示を認める.正常の左顎下腺は同定できない.病理診断:low grade B細胞リンパ腫.
【症例2】
70歳代,男性.主訴:左耳介前部腫脹,現病歴:2010年8月から左耳介前部の腫脹を自覚していたが放置.同年11月に近医受診し,CT,MRIで耳下腺腫瘍を指摘され,精査加療目的に奈良医大耳鼻咽喉科紹介受診.超音波所見:左耳下腺は著明に腫大し,ほぼ全域が低エコーの腫瘤様構造に置き換わり,分葉状・多結節状を示す.カラードプラ法では既存の血管構築を維持したような走行を示す豊富な血流表示を認める.病理診断:びまん型大細胞性B細胞リンパ腫.
【症例3】
10歳代,男性.主訴:左耳下腺腫脹,現病歴:2010年7月に左耳痛のため近医受診し,左耳下腺腫脹を指摘された.抗生剤内服で耳痛は軽快したが,腫脹は持続しているため,精査加療目的に奈良医大耳鼻咽喉科紹介受診.超音波所見:左耳下腺内に3.5×2.5cmの分葉状腫瘤を認める.境界明瞭.内部は低エコー主体で線状,点状の高エコーが混在している.カラードプラ法で豊富な血流表示を認める.病理診断:Castleman病(hyaline-vascular type).
【考察】
症例1は,顎下腺領域に腫瘤を形成した悪性リンパ腫であり,境界明瞭で辺縁平滑,内部は均一低エコーという所見は悪性リンパ腫としては典型的であると考えられる.症例2は,耳下腺にびまん性に増生した悪性リンパ腫症例で,超音波所見上,既存の血管構築を維持しつつ血流が増強している病変として描出された.腫瘍性病変のなかで,このような炎症性病変に類似した所見を示すのは悪性リンパ腫の特徴のひとつであるので,疼痛などの局所所見に乏しいという臨床所見と合わせると術前診断可能な症例と考える.症例3は,耳下腺に境界明瞭な孤立性腫瘤を形成したCastleman病の症例であった.内部は低エコー主体であったが,均一ではなく,線状の高エコー域を伴っていたため,術前にリンパ増殖性疾患とは診断できなかった.高エコー域は,病理と対比すると血管周囲に増生した線維化領域を反映していると思われた.また,今回の3症例に共通して,カラードプラ法で非常に豊富な血流表示が認められたことは,リンパ増殖性疾患を示唆する所見のひとつであると考えられる.