Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
体表臓器:体表臓器

(S574)

肺エコーの有用性について-胸部CTとの比較-

Comparison of lung ECHO and CT

坪 敏仁

Toshihito TSUBO

弘前大学医学部附属病院集中治療部

Intensive care unit, Hirosaki university hospital

キーワード :

【目的】
経胸壁肺エコーは,従来胸水や胸壁に接した病変を観察するために用いられてきた.近年,胸膜から生じるcomet tail artifactが肺水腫や胸膜肥厚のサインとして提示されている.今回,経胸壁肺エコーを胸部CTと比較し,その有用性を呼吸不全患者で検討した.
【対象】
集中治療部において経胸壁肺エコーと胸部CTを同時に行った成人症例25例を対象とした.症例は腹部大動脈破裂から蘇生後まで多岐にわたったが,全員低酸素血症を主とする呼吸不全を合併していた.
【方法】
経胸壁肺エコーでは診断装置としてSONOS7500,4MHZセクター型探触子また16MHzリニア型探触子を使用した.肺胸壁エコー測定は全胸部体表で行い,肺底部の胸水面積,硬化部断面積,comet tail artifactの有無,comet tail artifact number score,胸膜性状,気胸の有無などを留意して検討した.胸部CTではすべての症例で造影を行い,放射線医のコメントを参照して判断した.また経胸壁心エコーも行い,肺高血圧の有無,僧房弁逆流の有無も検討した.
【結果】
胸水は右肺においてCTで15名に認められ,平均面積は33.0±20.5cm2,肺エコーでも15名であり平均面積は32.5±23.4cm2であった図).硬化は右肺においてCTで12名に認められ,23.7±16.0cm2であり,肺エコーでは13名に認められ,24.1±18.0m2であり,強い相関を示した.肺局所の血流は8名で認められ,その血管抵抗係数は0.85±0.22であった.comet tail artifactは経胸壁肺エコーで15名の多数に認められ,comet tail artifact score numberは平均2.5±1.2であった.CTでのcomet tail artifact形成を疑わせる肺胞中隔と臓側胸膜の接点はほとんど認められなかった.肺実質はCTではスリガラス陰影,浸潤影,空洞などの多彩な病変が認められた.経胸壁肺エコーの情報は病変部位が胸膜と接したときのみ得られた.胸膜の肥厚は間質性肺炎患者で認められた.肺高血圧は5名で,また僧房弁逆流は4名で認められた.
【結論】
呼吸不全患者において,胸部CTと経胸壁肺エコーは,肺下肺野の含気を失った病変部位ではほぼ互角の情報を得ることができた.経胸壁肺エコーは肺実質ではほとんど情報がなかた.しかし,経胸壁肺エコーはcomet tail artifactや局所肺血流の観察が可能であり,胸部CTとは,お互いに相補的な関係にあると思われた.現在,さらに症例数を増加させている.