Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
腎泌尿器:腎泌尿器

(S570)

虫垂炎を契機に発見された腎嫌色素細胞癌の一例

A CASE OF CHROMOPHOBE CELL RENAL CARCINOMA INCIDENTALLY DETECTED WITH ACUTE APPENDICITIS

友兼 毅, 岸 久美子, 板垣 達三, 井上 修志

Takeshi TOMOKANE, Kumiko KISHI, Tatuzou ITAGAKI, Syuuzi INOUE

独立行政法人国立病院機構 高知病院消化器科

Department of Gastroenterology, National Hospital Organization Kochi National Hospital

キーワード :

症例は26歳,男性.生来健康で既往歴に特記事項はない.前日夜からの心窩部痛を主訴に早朝に救急外来を受診した.腹部触診にてMcBurney点に圧痛を認めた.採血結果ではWBCの高度増加とCRPの微増以外は特記事項を認めなかった.理学所見より急性虫垂炎を疑い腹部エコーを施行したが明らかな虫垂の腫大を指摘できなかった.しかしながら右腎に59mm×76mmの周囲との境界明瞭なhigh echoicな腫瘍を認めた.腫瘍の内部構造はやや不均一で血流に乏しかった.ダイナミックCTを施行したところ虫垂の軽度腫大と少量の腹水を認め急性虫垂炎と診断した.また腎腫瘍は造影早期相で不均一,富血管性に染まり後期相ではwash outされており虫垂炎を合併した腎細胞癌が疑われた.虫垂炎に関しては抗生剤にて保存的加療を行い翌日には症状も改善した.入院第8病日に根治的右腎摘除術と虫垂合併切除を行なった.術後の経過は良好であり第16病日に退院した.病理検査の結果,細胞膜が好酸性でかなり厚い腫瘍細胞が大索状もしくはびまん性に浸潤増殖していた.腫瘍細胞周囲の毛細血管は乏しかった.コロイド鉄染色に陽性,c-kit陽性,vimentin陰性,CD68陰性,CD10陽性であり腎嫌色素細胞癌と診断した.CD10陽性症例は予後不良との報告があり現在慎重に外来フォロー中である.腎嫌色素細胞癌は1985年にThoenesらにより報告された亜型である.1999年に腎癌取り扱い規約に分類されて以来報告が相次いでいる.発生頻度は腎上皮性腫瘍の約5%とされ,発症年齢は通常の腎細胞癌より若年傾向とされている.肉眼的血尿や疼痛を主訴に発見される症候性の症例が54%を占めると報告されている.また腹部エコーではhigh echoicで乏血性の腫瘍が多いと報告されている.通常の腎細胞癌が富血性である事を考えると本症例の特徴の一つと考えられる.本症例のように無症候性で偶然発見されることも少なくなく,若年で典型的でない腎腫瘍を認めたときには本疾患も鑑別に考慮する必要がある.今回我々は虫垂炎を契機に発見された腎嫌色素細胞癌を経験したため,文献的考察を加えて報告する.