Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:母体

(S561)

妊娠高血圧症候群発症予知に対する子宮動脈波形と動脈スティフネスの併用効果の解析

Prediction of preeclampsia by a combination of uterine artery Doppler and pulse wave analyses

金山 智子, 冨松 拓治, 藤田 聡子, 柿ヶ野 藍子, 味村 和哉, 谷口 友基子, 金川 武司

Tomoko KANAYAMA, Takuji TOMIMATSU, Satoko FUJITA, Aiko KAKIGANO, Kazuya MIMURA, Yukiko TANIGUCHI, Takeshi KANAGAWA

大阪大学産科婦人科学

obstetrics & gynecology, osaka university

キーワード :

【目的】
正常妊娠では,トロホブラスト細胞がらせん動脈壁に浸潤し,らせん動脈を大きく拡張した筋層を欠く子宮胎盤血管に変え,大量の血液を絨毛間腔に供給する.しかし,妊娠高血圧症候群では何らかの原因でその機構に異常が生じ,トロホブラスト細胞のらせん動脈壁への侵入が障害され,胎盤血流供給不全が現れる.また,子宮の血管抵抗の異常上昇によって,子宮動脈ドプラ血流速度波形は拡張期血流速度の低下した異常波形(異常RI値及び拡張早期切痕出現)となることはすでに知られているが,偽陽性・偽陰性が多い.近年,血圧脈波による動脈スティフネスの指標(Augmentation Index:以下AI)の測定法が開発され,循環器領域では臨床応用されている.AIは全身の血管状態を反映し,血管が硬くなるほど上昇する.妊娠高血圧症候群を発症した妊婦では,全身の血管内皮細胞が障害され,全身の血管が硬くなり,AIが上昇していると考えられる.我々は子宮動脈のResistance IndexとAIが独立した指標として使用できるということを報告してきた.このことからAIと子宮動脈RIとの同時測定を行い,その併用効果を前方視的に解析した.
【方法】
2009年1月〜2011年3月に当院でインフォームド・コンセントを得た妊婦450名を対象に,非侵襲的な血圧脈波計HEM-9000AIを用いAIを測定した.妊娠30週における90th percentile値であるAI:80以上を異常値とした.また,超音波検査にて子宮動脈ドプラ血流速度波形を測定し,子宮動脈mean-Resistance Indexが0.70以上もしくは片側・両側notchの存在を異常と判定した.
【結果】
妊娠高血圧症候群は26名に発症した.発症時点でAIは上昇しており(平均91vs正常妊婦の平均68),その上昇は,妊娠高血圧症候群と診断される数週間前より始まる傾向がみられた.また妊娠18週から32週の間で,子宮動脈波形とAIがともに異常を示した妊婦が15名おり,そのうち10名が妊娠高血圧症候群を発症した(陽性的中率67%).さらに,残りの5名は全員子宮内胎児発育遅延を発症した.つまり2つを合わせると子宮動脈波形とAIがともに異常を呈した時の陽性的中率は100%であった.
【結論】
妊娠高血圧症候群発症予知と子宮内胎児発育遅延発症予知は困難であるが,子宮動脈波形とAIを組み合わせることによって罹患予知率の上昇が期待される.