Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:胎児

(S559)

胎児水腫の心機能評価にTei indexが有用であった1例

Use of the Tei index to evaluate fetal cardiac functions in hydrops case

原田 崇, 木山 智義, 経遠 孝子, 岩部 富夫, 原田 省

Takashi HARADA, Tomoiki KIYAMA, Takako TSUNETOU, Tomio IWABE, Tasuku HARADA

鳥取大学女性診療科

Obstetrics and Gynecology, Tottori University

キーワード :

【はじめに】
超音波検査による胎児心機能の評価に,cardiovascular profile score(CVPS)として知られる様々なパラメーターが利用されている.その他に,パルスドプラ法を用いたTei indexは収縮能と拡張能の両方を評価可能な方法として,胎児における応用が検討されている.今回,胎児水腫症例において,Tei indexが胎児心機能の評価に有用であった1例を経験したので報告する.
【症例】
症例は30歳の初産婦で,既往歴および家族歴に特記すべき異常を認めなかった.前医で妊婦健診が行われ,初期に発熱および皮疹などは認めなかった.妊娠32週3日の妊婦健診時に胎児の右側胸水貯留を指摘され,翌日に紹介初診となった.児は皮下浮腫を認めず,右側優位の両側胸水貯留を認めた.CTARは32.3%で,CVPSは9点であり,胎児の右心室壁は左心室壁に比べ肥厚していた.妊娠33週5日に胎児胸水の増加を認めたため入院となった.CTARは35.9%で,CVPSは7点であった.同日に胎児右側の胸腔穿刺を行い,黄色胸水を17ml採取した.胎児胸水はリンパ球が増加しており,乳び胸水と診断した.羊水を染色体検査へ提出したが正常核型であった.妊娠34週3日に胎児胸腹水の増加を認めた.左室のFSは29.4,EFは61.7であり,CTARは33%,Tei index of LVは0.53,Tei index of RVは0.47であった.妊娠34週4日に胎児の胸腹水はさらに増加し,皮下浮腫も増悪した.CTARは28%,CVPSは8点であったが,Tei index of LVは1.035,Tei index of RVは0.648と上昇し,胎児心機能の低下が認められ,NSTでvariabilityの減少があり胎児機能不全の診断で緊急帝王切開を施行した.2431gの女児でApgarは2/2,臍帯動脈血pHは7.309であった.児は出生後直ちに,挿管管理となりHFOによる人工呼吸管理を開始された.胸腔穿刺で左右の胸水をそれぞれ40ml除去した.NICU入室時の心エコーでは,LVDdは12.9mm,LVDsは8.1mm,EFは74.9であったが,心筋は明らかに肥厚し心筋壁運動の低下を認めた.心不全に対する治療が開始され,日齢3に尿量がやや増加し,胸水および腹水は減少した.日齢9より尿量低下し,低血圧となったため,両親へICを行い緩和ケアの方針となり,日齢17に永眠した.胎児水腫の原因検索目的で行われた染色体検査,アミノ酸分析などに異常を認めなかった.児の臨床経過より心筋の緻密化障害を疑ったが,剖検の同意は得られなかった.
【考察】
出生前より胎児水腫の原因を診断できなかったが,胎児心筋の肥厚および心室壁の運動低下を認めたため,胎児心不全を疑いCVPSによる心機能評価を行った.しかし本症例ではhydrops以外のパラメーターに異常なく,Tei indexは高値となった.Tei indexの変化だけで,胎児心不全の診断とはならないが,本症例のように胎児心拡大や超音波ドプラ法による血流計測に異常を認めない症例では,Tei indexは胎児心機能の評価に有用と考えられた.