Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:その他

(S554)

上腸間膜動脈の造影超音波

Contrast-enhanced US of SMA

渡辺 智美1, 中川 正康2, 石田 秀明3, 大山 葉子4, 長沼 裕子5

Satomi WATANABE1, Masayasu NAKAGAWA2, Hideaki ISHIDA3, Youko OHYAMA4, Hiroko NAGANUMA5

1市立秋田総合病院臨床検査科, 2市立秋田総合病院循環器内科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5横手市立病院内科

1Department of Clinical Laboratory, Akita City General Hospital, 2Department of Cardiology, Akita City General Hospital, 3Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Clinical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 5Department of Inter Internal Medicine, Yokote City Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部カラードプラ(CD)法の登場以来,腹部血管病変の超音波診断能は急速に向上した.しかし,上腸間膜動脈は,超音波ビームに対する角度や拍動性,などで,詳細な観察がしばしば困難である.この問題点は造影超音波法(CEUS)によりかなり改善されると期待されている.しかし,現時点で造影超音波検査の適応が肝腫瘍に限定されているため,実際にCDとCEUS所見を比較検討する機会はそれほど多くはない,我々はその比較が可能であった17例に関し,両者の比較をし若干の知見を得たので報告する.
【使用診断装置】
東芝社製Aplio XG,Aplio500 (中心周波数:3-4MHz),GE社製LogiqE9,日立社製:Preilus.造影法の手順は,ソナゾイド(GE Health Care社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【対象と方法】
他の画像診断や臨床像を総合し最終診断が確定した下記の17例に関し同日のCD所見とCEUS所見を所見の明瞭さを中心に比較検討した.疾患の内訳は:a)膵癌の上腸間膜動脈浸潤13例(男性9:女性4,年齢:50-91歳),b)孤立性上腸間膜動脈解離1例(50歳代男性),c)(動脈硬化による)高度上腸間膜動脈狭窄3例(男性2:女性1,年齢:70-85歳)であり,造影超音波検査の主目的は,a)群は肝転移の有無のチェック,b)c)群は肝内の小血管腫の確定,のためであった.
【結果】
1)17例全例において上腸間膜動脈の狭窄の範囲と程度の把握に関してCEUSがCDを凌いでいた.2)高度上腸間膜動脈狭窄の2例においては上腸間膜動脈周囲のtissue vibration(動脈の激しい動きによる動脈周囲の組織振動によるカラーノイズ)のためCDによる上腸間膜動脈の観察が困難でCEUSが特に有用であった.発表では,(1)腹部全体に及ぶ疼痛を主訴に救急受診した孤立性上腸間膜動脈解離症例,(2)腹部不快感を主訴に来院した上腸間膜動脈狭窄例(tissue vibration (-)),(3)腹部不快感で来院した上腸間膜動脈狭窄例(tissue vibration (+)),のCD,CEUS所見を中心に報告したい.
【まとめと考察】
安定した造影効果を示すソナゾイドの市販直後からその高い微細血流表示能が注目され,その延長としてCEUSによる腹部血管の詳細な観察の可能性が挙げられていた.しかし,現時点で本邦における造影超音波法の適応が肝腫瘍に限定されているため,実際にその診断的価値を確認する機会は必ずしも多くは無かった.その意味で今回の検討は貴重で改めてCEUSによる腹部血管の詳細な観察能が確認された.特に,上腸間膜動脈に関してはCD法では,a)血管の走行が超音波ビームに対し垂直に近いため血流信号がとりにくいこと,b)CD法では表示画面の時間分解能と空間分解能が劣化するため詳細な観察には不向き,である,などの問題があり,さらに,c)tissue vibrationなどのカラーノイズの影響もあり,一層診断に苦慮するため造影超音波法の診断能が強調される結果が得られたと思われた.今後造影超音波検査の適応拡大により,さらに多くの活用が確認されると期待される.