Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:胆膵

(S550)

自己免疫性膵炎4例の超音波所見の検討

Ultrasonography findings in autoimmune pancreatitis

森島 大雅1, 大塚 裕之1, 清野 隆史1, 仲尾 洋宣2, 前野 直人2, 加藤 統子2, 石原 茂秀2, 長尾 康則2, 石川 英樹1

Tomomasa MORISHIMA1, Hiroyuki OTUKA1, Takashi SEINO1, Hironobu NAKAO2, Naoto MAENO2, Noriko KATO2, Shigehide ISHIHARA2, Yasunori NAGAO2, Hideki ISHIKAWA1

1公立学校共済組合 東海中央病院消化器内視鏡センター, 2公立学校共済組合 東海中央病院診療放射線科 超音波検査室

1Department of Digestive Endoscopy, Tokai Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers, 2Department of Radiology, Tokai Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers

キーワード :

自己免疫性膵炎は本邦から報告され,発症に自己免疫学的機序が想定される膵炎であり,厚生労働省研究班の全国調査では有病率は人口10万人当り0.9人/年とされている.膵腫大や膵管狭細像などの特徴的な画像所見,血清IgG, IgG4の上昇,病理学的に高度のリンパ球,形質細胞の浸潤と線維化を認めるとされている.
【目的】
当院にて経験した自己免疫性膵炎例の画像所見を含めた特徴を検討した.
【対象】
当院にて2008年4月から2011年11月までに自己免疫性膵炎と診断された4例.
【結果】
5例とも男性で,平均年齢は69歳(56-84)であった.発症時の臨床症状は心窩部痛が3例,残り1例は無症状であった.2例で血液検査にて著明な肝胆道系酵素の上昇を認め精査となり,2例は腹部超音波検査にて膵腫大を認め精査となった.血液検査では,IgG4の上昇を3例で認めた.腹部超音波検査では,膵はびまん性に腫大し,点状高エコーを伴った低エコー像として認められ,DynamicCTでは,2例で膵全体の腫大,capsule-like rimを認め,2例では膵腫大は膵頭部に限局していた.ソナゾイドによる造影超音波では,4例とも造影早期より濃染を認め,限局した膵腫大部位も周囲膵組織と比較して造影効果に差は認めなかった.EUSでも同様に膵のびまん性腫大,点状高エコーを伴った低エコー像を認め,明らかな腫瘤としては描出されなかった.ERCPでは膵管全体のびまん性の狭細像が2例,膵頭部のみの狭細像が1例,膵頭部,尾部での狭細像が1例認めた.確定診断目的に,3例にEUS-FNAによる組織診断を施行した.3例とも小葉間,小葉内に強い繊維化,中程度の炎症細胞・リンパ球優位の浸潤を認め,IgG4免疫染色が可能であった1例では,IgG4/IgG比が50%以上であり,自己免疫性膵炎と診断された.確定診断時には全例で自覚症状を認めなかったが,黄疸を伴っていた1 例,肝内胆管から膵内胆管にかけて壁不整を伴った1例の計2例に対してステロイド内服治療を開始し,1例では3週間後の採血では黄疸は認めず,肝胆道系酵素も正常化が確認された.
【考察】
これまでの報告から自己免疫性膵炎は高齢男性に多いとされ,また初発症状は約30%が軽い腹痛や黄疸とされており,自験例でも全症例が男性例で,心窩部痛を3例で認めた.画像所見では超音波検査にて特徴的な膵腫大,点状高エコーを伴った低エコー像を全例で認められ,DynamicCTでは特徴的なcapsule-like rimを伴った症例も経験した.IgG4の自己免疫性膵炎の感度86%,特異度96%,正診率91%と報告されており,自験例でも3例で上昇が認めた.病変が限局する場合は膵癌との鑑別が重要となるが,造影超音波検査では周囲膵組織と同様の造影効果を有し,またEUS-FNAにてIgG4等の免疫染色を含めた組織診断が可能であり,超音波検査は確定診断に有用であると考えられた.
【結語】
自己免疫性膵炎では超音波検査にて特徴的な所見が認められ,診断に有用であると考えられた.