Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:肝2

(S548)

経過観察中に不明瞭化した限局性結節性過形成の1例

A case of the focal nodular hyperplasia decreased in size during the follow-up observation

小林 亜也子, 斎藤 明子, 栗山 朋子, 合阪 暁, 米田 有紀, 高山 敬子, 白鳥 敬子

Ayako KOBAYASHI, Akiko SAITO, Tomoko KURIYAMA, Aki AISAKA, Yuki YONEDA, Yukiko TAKAYAMA, Keiko SHIRATORI

東京女子医科大学消化器内科

Gastroenterology, Tokyo Women’s Medical University Hospital, Tokyo, Japan.

キーワード :

【症例】
55歳 女性 主訴:体重減少既往歴:卵管腫瘍切除(詳細不明) 甲状腺機能亢進症20年前 6ヶ月間経口避妊薬内服歴あり飲酒歴:肝腫瘤指摘されるまで週2・3回の飲酒(3合/日)を継続 家族歴:大腸癌(父)現病歴:2009年4月健診で肝機能障害を指摘され近医受診.腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され当院受診.造影CT・MRI検査で肝S3に造影効果のある31x30mmの腫瘤を認めた.超音波検査では,肝S3に35×23mmのやや不整形,境界比較的明瞭,辺縁に低エコー域を有し,内部は等エコーの結節性病変であり,カラードプラ法にて僅かに星芒状血流を疑わせる所見を認めた.ソナゾイド造影エコーにて,動脈相で腫瘤全体が高エコーに染影され,50分まで経時変化を観察するも周囲肝より高エコーを持続した.明らかな星芒状血流は描出されなかった.以上より,hyper vascularな良性腫瘍が考えられ,確定診断のため肝腫瘤生検目的で入院となった.入院時血液生化学検査:T-bil 0.5 mg/dl, AST 58 U/l, ALT 49 U/l, ALP1146 U/l(ALP2+ALP3 100 %), γGTP 219 U/l, chE 411 U/lと肝胆道系酵素の上昇を認めたが,腫瘍マーカーは,CEA,CA19-9,AFP,PIVKA-Ⅱのいずれも正常値であった.ウイルスマーカーは陰性であった.入院後経過:超音波ガイド下に21ゲージ針にて経皮的肝腫瘤生検を施行した.病理組織所見:腫瘤部の生検組織で細胞異型を認めず,一部に細胆管増生を疑わせる所見があり,肝限局性結節性過形成(FNH)が考えられた.外来で経過観察を行ったが,腫瘤境界は不明瞭化し,2010年12月の造影エコー所見では明らかな染影像を認めなかった.2011年11月にはBモードで腫瘤を指摘できなくなった.
【考察】
FNHは良性腫瘤であるが,稀に増大,縮小を認めることがある.我々の症例でも本例を含む3例に腫瘍径の明らかな変化を認めている.本症例はカラードプラで僅かな星芒状血流様の所見を認め,病理組織所見と共に,FNHに類似する過形成結節と考えた.造影エコーにおいて,50分までの観察でも高エコーの染影像が持続し,2年の経過で不明瞭化した興味ある症例として報告する.