Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:肝1

(S546)

肝内シャントのdual Dopplerを用いた観察

Dual Doppler observation on hepatic vascular anastomosis

小丹 まゆみ1, 長沼 裕子2, 大嶋 聡子1, 船岡 正人2, 藤盛 修成2, 奥山 厚2, 武内 郷子2, 石田 秀明3, 花岡 明彦4, 上田 若奈4

Mayumi KOTAN1, Hiroko NAGANUMA2, Satoko OOSHIMA1, Masato FUNAOKA2, Syuusei FUJIMORI2, Atsushi OKUYAMA2, Kyouko TAKEUCHI2, Hideaki ISHIDA3, Akihiko HANAOKA4, Wakana UEDA4

1市立横手病院臨床検査科, 2市立横手病院消化器内科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4日立メディコ超音波担当

1Department of Medical Laboratory, Yokote Munincipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Munincipal Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Ultrasound System Group, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【はじめに】
Dual Dopplerは,2か所で同時にドプラ信号をとることのできる方法である.血流は呼吸,心拍の影響を受けその時々で異なるため,測定したい箇所,特に病変の前後など,2か所で同時にドプラ信号を観察できることはその状態を推測するのに役立つと思われる.今回,肝内シャントの前後の血流状態をdual Dopplerを用いて観察し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
門脈-肝静脈シャント(以下P-V)8例(正常肝6例,アルコール性慢性肝炎1例,C型肝硬変1例),肝静脈-肝静脈シャント(以下V-V)2例(肝嚢胞1例,肝外門脈閉塞症1例),肝動脈-門脈シャント(以下A-P)10例(転移性肝腫瘍5例,肝血管腫3例,肝硬変2例),計20例.P-V,V-Vの診断は,B-モードとカラードプラ像で診断した.B-モード上で,視認可能なシャント部位の大きさの計測を行った.A-Pの診断は肝動脈と並走する門脈の逆流をもってA-Pとした.A-Pのシャント部位は末梢で視認できないため,大きさの計測は行わなかった.Dual Dopplerを用いて呼吸と心拍の条件をそろえシャント前後の血流波形を検討した.使用装置:日立Preirus.
【結果】
P-V8例のシャント部の大きさは1.6-6.7mm(平均3.9mm)であった.シャント前後の波形が両方とも拍動流で相似形を示した6例での大きさは平均4.7mmで,両方で定常流を示した2例は平均1.7mmだった.V-Vの2例ではシャント部の大きさが2.9mmの症例はシャント前後で拍動流を示し,1.6mmの症例では両方で定常流を示した.A-Pの10例では門脈逆流部の波形は拍動流6例(肝硬変2例,血管腫2例,転移性肝癌2例),定常流4例(転移性肝癌3例,血管腫1例)であった.
【考察】
従来,カラードプラ検査においてドプラ波形は一か所ごとの計測で,同時に複数個所のドプラ波形をとることはできなかったが,近年超音波装置に搭載されたdual Dopplerは,同じ時間軸で2か所の血流を同時に測定できる.血流波形は呼吸,心拍,腹圧などの影響を受け容易に変化する.Dual Dopplerでは呼吸や心拍の影響などの条件をそろえて観察することができるため,病態がどのように血流に影響をおよぼしているのか推測するのに役立つ.今回検討した肝内シャントでは,P-VとV-Vではシャント部が大きい場合,シャントを介して,シャント前である門脈または肝静脈にシャント後の肝静脈波形が伝わりやすいということが考えられた.A-Pは疾患や病態によってシャント後の波形が拍動性になる場合とならない場合とがあり,シャント部の大きさ,数,部位などが影響していると考えられ,出現機序により異なると思われる.原疾患による統一性はなく,いくつかの要因があると考えられ,今後のさらなる検討が必要である.Dual Dopplerは疾患の血流動態の把握に有用なツールであり,今後も症例を重ねて検討していきたいと考えている.