Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
血管:頸動脈エコーの応用

(S540)

脳梗塞患者における上腕動脈と総頸動脈径の関係(第2報)

Relationship between brachial artery and common carotid artery diameter in cerebral infarction (2nd report)

山本 真也1, 竹川 英宏1, 岡村 穏1, 岡部 龍太1, 平田 幸一2, 髙田 悦雄3

Masanari YAMAMOTO1, Hidehiro TAKEKAWA1, Madoka OKAMURA1, Ryuta OKABE1, Koichi HIRATA2, Etsuo TAKADA3

1獨協医科大学神経内科 脳卒中部門, 2獨協医科大学神経内科, 3獨協医科大学超音波センター

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
頸動脈における内中膜複合体厚の肥厚は冠動脈疾患や脳卒中との関連が知られている.また,近年では冠動脈病変と上腕動脈の血管径(brachial artery diameter:BAD)およびflow-mediated dilatation(FMD)の検討がなされ,BADはFMDよりも無症候性冠動脈病変との関連が強いことが示唆されている.一方,総頸動脈の血管径(common carotid artery diameter:CAD)の拡張は大動脈瘤との関連が示されており,動脈硬化との関係が示唆されている.しかし,脳梗塞におけるCADとBADの相関については検討が少なく,これら血管径の測定が脳梗塞の危険因子になるかは不明である.そこで,脳梗塞患者と血管障害の既往がない症例でCADとBADの関係について検討を行った.
【対象と方法】
アテローム血栓性梗塞(ATBI群)16例,心原性塞栓症(CE群)10例,脳卒中や心筋梗塞,末梢動脈閉塞症がない正常対象16例(NC群)を対象とした.脳梗塞の診断は,TOAST分類を用い,脳卒中専門医が診断した.超音波検査はSSA-770A(TOSHIBA製)の中心周波数7.5MHzリニア型探触子を使用し,血管径の計測は拡張末期に施行した.CADは頸動脈洞から約2cm体幹側,BADは肘部で計測を行い,左右でより拡張している血管を用いた.ATBI群,CE群,NC群におけるBADとCADの差について,Kruskal-Wallis検定およびpost hocとしてScheffe法を用いて検討した.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき行った.
【結果と考察】
年齢(中央値)はATBI群73.5歳,CE群78歳,NC群67.5歳とNC群で若い結果であったが,統計学的に差はなかった.BAD(中央値)はATBI群5.3mm,CE群4.2mm,NC群5.3mmとCEで細い傾向にあったが有意差は認めなかった.一方,CAD(中央値)はATBI群8.55mm,CE群8.25mm,NC群7.7mmと,ATBI群はNC群よりも有意に高値であった.BADの拡張は無症候性冠動脈病変を示唆するパラメーターであることが報告されている.また,頸動脈における動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中といったアテローム血栓症を予測する因子であることが知られているほか,総頸動脈の拡張は大動脈瘤を示唆する所見であることも報告されている.超音波検査で簡便に血管径の計測が可能な部位における動脈硬化性変化の危険を予測することは,健康診断などで有用性が高いと考えられる.本検討では血管径の拡張がアテローム血栓性脳梗塞の危険因子として有効か検証を行った.その結果,BADでは有意差が得られず,CADの拡張がアテローム血栓性脳梗塞を予測し得る因子である可能性が示唆された.頸動脈における内中膜複合体厚や頸動脈狭窄との関連は施行しておらず,今後検討が必要であるが,CADの拡張を認める症例では,血管障害の危険因子管理が重要であると推察される.
【結語】
CADの拡張は大動脈瘤合併のみならず,ATBIとの関連が示唆された.一方,BADは頸動脈におけるプラークスコアとの関連が示唆されているが,本検討からは,ATBIとCEの鑑別に有効である可能性は示唆されたが,症例数の蓄積が必要と考えられた.