Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例4

(S536)

冠動脈仮性動脈瘤の1症例

A case of coronary artery pseudoaneurysm

北出 和史1, 森 宏樹1, 守安 謙志1, 有田 勝1, 柏瀬 一路2, 水谷 哲1, 上田 恭敬2, 榊 雅之3

Kazushi KITADE1, Hiroki MORI1, Kenji MORIYASU1, Masaru ARITA1, Kazunori KASHIWASE2, Tetsu MIZUTANI1, Yasunori UEDA2, Masayuki SAKAKI3

1大阪警察病院臨床検査科, 2大阪警察病院循環器科, 3大阪警察病院心臓血管外科

1Division of Clinical laboratory, Osaka police hospital, 2Division of cardiology, Osaka police hospital, 3Division of Cardiovascular surgery, Osaka police hospital

キーワード :

【症例】
60歳代 男性
【現病歴】
2009年1月〜3月にかけ他院にて肺炎,心不全にて入院,内科的治療により改善したが心不全精査のため施行された冠動脈造影検査にて左冠動脈主幹部(LMT)+2枝狭窄病変認めCABG目的のため当院紹介となった.3月,術前検査にて内頸動脈,前大脳動脈狭窄指摘されたためOff pump CABG施行(LITA→LAD,LITA→RA→D1 Ycomposite施行)術後経過良好にて同月退院となる.術後他院にて経過観察.5月に施行した術後造影でバイパス開存確認.10月にLMT,前下行枝(LAD)にPCI施行,その際LADに穿孔を生じたため当院緊急搬送となった.
【既往歴】
35歳高血圧症,45歳糖尿病,66歳糖尿病性腎症
【来院時身体所見】
身長160cm体重54Kg,血圧179/84mmHg,HR=78/min(整)意識 清明,体温35.9℃,SPO2=99%(経鼻2L/min)
【心エコー所見,経過】
来院時10月2日LAD28mm,LVD52/45mm,前壁〜中隔にかけ壁運動低下(severe hypokinesis)EF=43%,FS=13% 心臓前面,前室間溝にΦ55×44×32mm瘤を認め右室腔を圧排していた.カラードプラにてLADから瘤内に流入血流認めるも一方向性連続性血流であった.瘤内を検索すると瘤内から右室に流出する血流を認め,冠動脈→瘤→右室のshuntであることを確認し冠動脈-右室瘻を疑う所見であった.5日後エコー検査で瘤サイズ増大を認めカテーテルによる冠動脈損傷修復術施行となった.しかし他院で挿入したステントの屈曲に引っ掛かりcovered stentによる修復は困難と判断し断念した.20日後のエコーでΦ57×47×70mmとサイズさらに増大し破裂による突然死のriskを考え心臓血管外科で10月26日瘤閉鎖術施行.
【手術所見】
仮性瘤の右側を切開し内部の血栓を除去したところ,瘤内へ噴出する血液を認めた.術前診断のLADの穿孔部と考えられた.フェルト付き4-0 prolene3針にて結紮し瘤の内側から止血した.右室への流入部は明らかでなかったが,pump offしても右室から瘤内への出血は認められなかった.これで瘻孔は閉鎖できたと判断し,手術を終了した.術後仮性瘤は退縮し血流は消失した.
【考察】
冠動脈穿孔に伴う仮性動脈瘤を経験した.冠動脈瘤はほとんど動脈硬化性変化または先天性と言われたが近年ではPCI後の冠動脈瘤が増加傾向と報告されている.今回はLAD病変で左室前面,前室間溝に存在したため胸壁に近く明瞭にエコーで観察できた.仮性動脈瘤内の血流情報や冠動脈との交通,仮性瘤の大きさの経過観察にも非常に優れミリ単位での経過観察が可能であった.そして盗血流による冠潅流低下に伴う壁運動異常も評価可能であった.
【結語】
冠動脈仮性動脈瘤症例を経験し診断,経過観察に心エコーが有用性であった.