Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例4

(S535)

肺動脈に穿孔したBentall術後吻合部仮性動脈瘤の1例

A case of anastomotic pseudoaneurysm with fistulization into the pulumonary artery after Bentall procedure

福岡 陽子1, 尾原 義和1, 西本 美香1, 山本 克人1, 谷内 亮水2, 清遠 由美2, 土井 由賀利2

Yoko FUKUOKA1, Yoshikazu OHARA1, Mika NISHIMOTO1, Katsuhito YAMAMOTO1, Ryosui TANIUCHI2, Yumi KIYOTOH2, Yukari DOI2

1高知医療センター循環器内科, 2高知医療センター医療技術局

1Division of Cardiology, Kochi Health Sciences Center, 2Division of medical technology, Kochi Health Sciences Center

キーワード :

症例は61歳,男性.1999年に大動脈弁輪拡張症に対して大動脈基部置換手術(Medtronic Hall,人工弁 25mm,INTERGARD 26mm,Carrel patch法)を施行された.2011年6月中旬より左前胸部痛と呼吸困難が出現し,外来受診した.胸部レントゲンでは肺血管影が増強し,両側胸水貯留を認めた.心エコー検査では,心室中隔は拡張期に左室側へ圧排され,中等度の三尖弁逆流を認め,右室・右房圧較差69mmHgと肺高血圧を呈していた.心内シャントを認めなかったが,肺動脈内に27×23mm大の等エコー腫瘤を認め,腫瘤部位の周囲に連続性の異常血流シグナルが描出された.造影CTでは,上行大動脈と大動脈弓部の移行部の後面から大動脈壁が突出,右肺動脈内に陥入し内腔が連続していた.上行大動脈仮性動脈瘤肺動脈瘻の診断で緊急手術となった.術中所見では,Bentall手術後の末梢側吻合部後壁に仮性瘤が生じ,右肺動脈に穿破しており,上行大動脈置換術(J graft 26mm)と肺動脈形成術(自己心膜パッチ)を施行した.術後CTではグラフト吻合部に異常を認めず,術後心エコー検査では遺残シャントなく,三尖弁逆流や肺高血圧は消失した.人工血管置換術後の合併症として吻合部動脈瘤がある.頻度は0.5〜4%と報告されており,仮性動脈瘤は瘤壁の脆弱性から放置すれば破裂するリスクが高く,診断がつき次第可及的早期に手術するべきである.大動脈瘤肺動脈瘻は胸部大動脈破裂症例の約4%程度と稀であるが,左-右シャントにより急性心不全を発症するため重篤な疾患である.吻合部動脈瘤は長期経過例においても起こり,上行瘤は解剖学的に肺動脈との瘻孔を形成しやすいため,人工血管置換術後の心エコー検査では大動脈肺動脈瘻も念頭においてチェックを行う必要がある.