Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例3

(S532)

透析シャント造設後に失神を繰り返した鎖骨下動脈盗血症候群の一例

A case of subclavian arterial steal syndrome presenting repeated syncope after the hemodialysis access construction

發知 淳子1, 山田 博胤1, 2, 中川 摩耶2, 西尾 進2, 玉井 利奈2, 平田 有紀奈2, 弘田 大智2, 山崎 宙1, 冨田 紀子1, 佐田 政隆1, 2

Junko HOTCHI1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Maya NAKAGAWA2, Susumu NISHIO2, Rina TAMAI2, Yukina HIRATA2, Daichi HIROTA2, Hiromu YAMAZAKI1, Noriko TOMITA1, Masataka SATA1, 2

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【症例】
71歳,男性.既往歴:大動脈解離(弓部全置換,遠位弓部ステント留置術後),大腸癌術後(肝・肺転移にて再発),多発性骨髄腫,慢性心不全,慢性腎不全.
【現病歴】
来院2日前に他院にて左前腕に透析シャントが造設され,以後左肩の疲労感を強く自覚していた.早朝,排尿後に失神して転倒し,当院へ救急搬送された.神経学的異常所見は認めず,頭部CTでも新規の梗塞巣や出血は認めなかった.不整脈も見られず,心原性失神を疑う所見も認めなかった.頸動脈エコー検査にて頸動脈に有意な狭窄病変は認めないものの,左鎖骨下動脈は解離しており,左椎骨動脈は収縮期・拡張期を通して連続性に逆流を認めていたことから鎖骨下動脈盗血症候群が鑑別疾患として考えられた.しかしながら,入院後は症状が消失したため経過観察されていた.その後,左前腕のシャントより維持透析が開始されたところ,第27,43病日に再び早朝トイレ歩行後に失神を認めた.繰り返す失神の原因として鎖骨下動脈盗血症候群が強く疑われ,頸動脈エコー検査が再検された.その結果,透析シャント造設以前より認めていた鎖骨下動脈盗血の,透析シャント造設後の増悪が判明した.また,左上腕部の圧迫により左椎骨動脈血流速波形の収縮期波が減高し拡張期波が順行性に変化し,盗血の軽減が証明された(図).このことから,透析シャントにより鎖骨下動脈盗血症候群の病態が悪化し,失神が顕在化したと思われた.
【まとめ】
本病態の把握には,血管エコー検査が非常に有用であった.大動脈解離の既往や動脈硬化リスクの高い患者の透析シャント形成においては,血圧の左右差だけでなく,脈波波形や血管エコー検査による評価が重要であると考えられた.