Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例2

(S529)

心機能の経過を観察しえた二次性ヘモクロマトーシスの1症例

Follow up study of cardiac function in a case of secondary hemochromatosis

小林 さゆき1, 吉原 麻衣2, 酒井 良彦1, 林 亜紀子1, 江口 美知子1, 薬袋 路子1, 善利 博子1, 小沼 善明2, 佐々木 伸二2, 高柳 寛1

Sayuki KOBAYASHI1, Mai YOSHIWARA2, Yoshihiko SAKAI1, Akiko HAYASHI1, Michiko EGUCHI1, Michiko MINAI1, Hiroko ZENRI1, Yoshiaki KONUMA2, Shinji SASAKI2, Kan TAKAYANAGI1

1獨協医科大学越谷病院循環器内科, 2獨協医科大学越谷病院臨床検査部

1Cardiology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital, 2Clinical Laboratory, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【はじめに】
心ヘモクロマトーシスにおいて鉄の沈着は部位によって異なり,心房より心室筋,心内膜側より心外膜側がより沈着の程度が強いとの報告がある.我々は二次性法ヘモクロマトーシス症例における左室心筋について2D tracking法を用いて検討し,局所間におけるradial peak strain,time to peak strainに差を認め,鉄キレート剤等による治療後,局所間の差が改善したと報告した.今回,同症例において左房機能を中心に心機能の経過を観察したので報告する.
【症例】
68歳,女性.現病歴は平成 17年4月貧血精査のため当院血液内科初診.骨髄異形成症候群と診断され,輸血施行約3年後より心不全が出現し,平成21年12月肝障害及び心拡大精査のため,当科受診.
【現症】
脈拍 72/分,整,血圧 112/64mmHg,胸部において心雑音及び肺野のcrackleは聴取せず.皮膚は褐色調で下腿浮腫を認めた.
【検査所見】
心電図は心拍数 72/bpm,洞調律,肢誘導にて低電位差,V1からV4にかけてpoor Rを呈し,胸部X線上,心胸郭比は68%と心拡大を認めた.血液検査においてAST 56 U/L,ALT 111 U/L,血清鉄 226μg/dl,フェリチン 11195 ng/mlと高値を認めた.
【心エコー図検査】
使用装置は東芝社製Artidaを用い,15ヶ月間の心機能を観察した.平成22年1月の心エコー図検査ではLVDd 50mm,LVDs 43mm,LVEF 0.30,LAD 43mm,左房のlongitudinal方向での収縮期peak strainは心房中隔,側壁,後壁,下壁,前壁すべてにおいて低値 (7から22%) であった.臨床所見より二次性ヘモクロマトーシスと考え,同時期より鉄キレート剤が開始された.平成22年10月においてLVDd 44mm,LVDs 29mm,LVEF 0.66,LAD 34mm,左房のlongitudinal方向での収縮期peak strainは各壁すべてにおいて改善を認め,特に下壁で顕著であった.しかし平成23年4月ではLVDd 45mm,LVDs 33mm,LVEF 0.53,LAD 33mmと軽度の左室機能低下にかかわらず,左房のlongitudinal方向での収縮期peak strainは各壁とも低値を示し(7.5%から22%),その2ヶ月後,肺炎にて永眠された.
【まとめ】
本例は2D tracking法を用いることにより,左房における局所心機能の経時的変化を客観的に評価できた.鉄キレート剤の治療等により左室及び左房の機能が一時改善し,局所間でも差を認めたことは,鉄の沈着も左房間で差があることが示唆され,貴重な症例と考え,報告した.