松本 直也¹, 鈴木 康之¹, 益岡 啓子¹, 長尾 建¹, 平山 篤志², 相馬 小百合¹, 上原 マリ子¹, 新井 行平¹

Naoya MATSUMOTO¹, Yasuyuki SUZUKI¹, Keiko MASUOKA¹, Ken NAGAO¹, Atsushi HIRAYAMA², Sayuri SOUMA¹, Mariko UEHARA¹, Kouhei ARAI¹

¹駿河台日本大学病院循環器科, ²日本大学医学部内科学系循環器内科学分野

¹Department of Cardiology, Nihon University Surugadai Hospital, ²Department of Medicine, Division of Cardiology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

症例1は60代女性で呼吸困難と心不全にて入院した．心電図は低電位と左室内伝導遅延を認めた．心エコー図にて左室は全体的壁運動低下を呈し左室駆出率は10％,僧帽弁閉鎖不全を中等度認めた．重度の三尖弁閉鎖不全症と右心系の拡大を伴っており,心室中隔は奇異性運動を呈していた．右室・左室共に粗造な肉柱の発達を認めた．冠動脈造影は正常であった．症例2は70才代女性で非典型的胸痛を主訴に来院した．心電図は非特異的T波異常を示していた．心エコー図にて左室は全体的壁運動低下を呈し左室駆出率は38％であった．中等度の僧帽弁閉鎖不全と大動脈弁閉鎖不全を認めた．左室の下壁から下側壁にかけて粗造な肉柱構造を認めた．冠動脈造影は正常であった．両症例共に負荷心筋血流スペクト検査を施行し左心室に虚血所見を示し,核医学診断は虚血性心筋症であった．本2症例は心エコー図上,粗造な肉柱構造以外は拡張型心筋症様の所見であったが,他のモダリティでは虚血所見を示し乖離を認めた．本疾患の診断にはマルチモダリティによる評価が必要と考えられた．