Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例1

(S526)

Bentall術後の冠動脈ボタン部仮性瘤を心エコーで診断しえたLoeys-Dietz症候群の1例

Pseudoaneurysm of right coronary button after modified Bentall operation with Loeys-Dietz syndrome ;a case report

中野 裕介1, 金 晶恵1, 志水 直1, 鉾碕 竜範1, 岩本 眞理1, 益田 宗孝2

Yusuke NAKANO1, Jeong Hye KIM1, Nao SHIMIZU1, Tatsunori HOKOSAKI1, Mari IWAMOTO1, Munenori MASUDA2

1横浜市立大学附属病院小児循環器科, 2横浜市立大学附属病院心臓血管外科

1Pediatric Cardiology, Yokohama City University Hospital, 2Cardiovascular Surgery, Yokohama City University Hospital

キーワード :

症例は16歳女児.13歳頃から労作時息切れが出現して徐々に増悪していた.15歳時に胸痛を主訴に他院救急搬送された.大動脈弁輪拡張症(AAE)及び重度の大動脈弁逆流(severe AR)に伴う急性左心不全に対して交連縫縮による大動脈弁形成術と上行大動脈基部ラッピング術施行.術後ARはやや改善したものの上行大動脈基部置換術の適応と判断され当院紹介となった.当院受診時の心エコーでは大動脈弁輪径25mm,Valsalva洞径36mmと拡大しておりARはsevereであった.当院にてmodified Bentall手術(Carrel Patch法 人工弁SJM Regent #21)施行.術後のARはtrivialまで改善して26日目に軽快退院となった.また大動脈組織の病理所見で中膜嚢胞性壊死がみられることや側彎及び顔貌等の骨格系の特徴からLoeys-Dietz症候群(Marfan類縁疾患)が強く疑われた.術後1年の定期外来で「胸がチクチクする」との胸部不快感の訴えあり,胸部X線写真で縦隔陰影の拡大を認めた.心エコーで8cm×5cm大のエコーフリースペースが心臓前面に存在しており心臓を圧排していた.内部にはモヤモヤエコーを認め,巨大な血腫が疑われた.また傍胸骨短軸及び長軸像で右冠動脈ボタンと思われる部位からスペース内への交通がカラードプラで確認され,ここをエントリーとする仮性瘤が疑われた.造影CTで同様の所見を得て確定診断し,準緊急で仮性瘤除去及び右冠動脈バイパス(右胃大網動脈グラフト)術を施行した.術後は経過順調で25日目に退院に至った.本症例では些細な訴えを契機に巨大な仮性瘤の診断に至り,比較的早期の再手術を施行できたが,外来日が数日後で瘤破裂をきたしていれば突然死の可能性もあった.吻合部離開による仮性瘤形成は大動脈基部置換術における重大な術後合併症である.特にMarfan症候群やLoeys-Dietz症候群を代表とする結合織疾患においては冠動脈吻合部の大動脈壁の残存が仮性瘤のリスクとなるとされており,術後の合併症として常に念頭に置く必要がある.心エコーは仮性瘤のエントリー部を指摘するのにも有用であった.