竹川 英宏¹, 豊田 茂², 岡村 穏¹, 山本 真也¹, 岡部 龍太¹, 井上 晃男², 平田 幸一³, 髙田 悦雄⁴

Hidehiro TAKEKAWA¹, Shigeru TOYODA², Madoka OKAMURA¹, Masanari YAMAMOTO¹, Ryuta OKABE¹, Teruo INOUE², Koichi HIRATA³, Etsuo TAKADA⁴

¹獨協医科大学神経内科　脳卒中部門, ²獨協医科大学心臓・血管内科, ³獨協医科大学神経内科, ⁴獨協医科大学超音波センター

¹Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, ²Department of Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, ³Department of Neurology, Dokkyo Medical University, ⁴Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
急性冠動脈症候群（ACS）はアテローム血栓性脳梗塞（ATBI）や閉塞性動脈硬化症といった全身のアテローム血栓症として管理する必要がある．また,アテローム血栓症では頸動脈病変の合併が多いが,ATBIとACSにおける直接的な頸動脈病変の違いについての検討は少ない．
【対象と方法】
初発ATBI（ATBI群）20例および初発ACS（ACS群）30例を対象とした．頸動脈病変は中心周波数7.5MHzのリニア型探触子を用い,プラークスコア（PS）,総頸動脈における最大内中膜複合体厚（IMT-Cmax）,頸動脈洞における最大内中膜複合体厚（IMT-Bmax）,不安定粥腫病変（低輝度病変,低輝度不均一型病変,潰瘍病変）および内頸動脈分岐部の高度狭窄（最大収縮期血流速度200cm/s以上）を評価した．両群における背景因子（年齢,性別,血管障害危険因子,発症前内服薬）と頸動脈病変について,マンウイットニーで検討した．なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき行った．
【結果と考察】
背景因子をみると,ATBI群はACS群と比較し高齢（前者73歳,後者68歳）であったが,その他両群に差は認めなかった．頸動脈病変では,PS,IMT-Cmax,IMT-Bmaxに差はなかったが,不安定粥腫病変はATBI群43.4％に対しACS群22.4％,高度狭窄はATBI群22.3％,ACS群3.6％と,ATBI群で有意に多く認められた．ACSやATBIはアテローム血栓症として同一概念疾患として考えられており,潰瘍などの不安定粥腫病変の存在は,虚血性脳血管障害の危険因子であることが報告されている．また70％以上の高度頸動脈狭窄が脳卒中再発のリスクであることも知られており,本検討では過去の報告を支持する結果であった．
【結論】
頸動脈病変の重症度はACSおよびATBIに差はないが,不安定粥腫病変および高度狭窄の合併は,ACSよりもATBI発症のより重要な危険因子であると推察される．
【参考文献】
1.Handa N, Matsumoto M, Maeda H, Hougaku H, Kamada T: Ischemic stroke events and carotid atherosclerosis. Results of the Osaka Follow-up Study for Ultrasonographic Assessment of Carotid Atherosclerosis （the OSACA Study）. Stroke 26: 1781-1786. 1995
2.Uchiyama S, Goto S, Matsumoto M, Nagai R, Origasa H, Yamazaki T, Shigematsu H, Shimada K, Yamada N, Bhatt DL, Steg PG, Ikeda Y; REduction of Atherothrombosis for Continued Health Registry Investigators: Cardiovascular event rates in patients with cerebrovascular disease and atherothrombosis at other vascular locations: results from 1-year outcomes in the Japanese REACH Registry. J Neurol Sci 287: 45-51. 2009