Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:循環器

(S521)

右左シャント診断における経食道心エコーと頸動脈エコーの比較

Detection of right-to-left shunts using transesophageal echocardiography and carotid duplex sonography

岡村 穏1, 江幡 敦子1, 竹川 英宏1, 山本 真也1, 岡部 龍太1, 平田 幸一2, 髙田 悦雄3

Madoka OKAMURA1, Atsuko EBATA1, Hidehiro TAKEKAWA1, Masanari YAMAMOTO1, Ryuta OKABE1, Koichi HIRATA2, Etsuo TAKADA3

1獨協医科大学神経内科 脳卒中部門, 2獨協医科大学神経内科, 3獨協医科大学超音波センター

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
塞栓源不明の脳梗塞では,下肢深部静脈血栓が卵円孔開存症などの右左シャント(right to left shunt:RLs)を介した奇異性脳塞栓症の鑑別が必要である.RLsの存在は,経食道心エコー(transesophageal echocardiography :TEE)が必須であるが,TEEは侵襲的であり,また脳梗塞急性期への施行は困難な場合も多い.一方,経頭蓋ドプラ法による診断も可能であるが,高齢者では検査不可能例も存在する.近年では頸動脈や大腿動脈での検出について報告されているが多施設での検討はなく,その有効性について検証を行った.
【対象と方法】
対象は脳塞栓症で入院となり,TEEの承諾が得られた連続56例である.RLsの検出は,右肘静脈より生食9mlと空気1mlを攪拌したコントラスト剤を注入し,Valsalva負荷を解除した後に微小な空気の信号を,TEEを用いて直接目視による確認を行った.また,頸動脈エコーはセクタ型探触子を用い,頭蓋外の右内頸動脈でドプラ波形を計測し,TEEと同様の方法でコントラスト剤の注入およびValsalva負荷を施行した後,微小栓子シグナルの出現を認めた場合,RLs陽性と判断した.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき行った.
【結果と考察】
TEEでRLsと確定診断がなされたのは14例であり,いずれもValsalva負荷解除後3心拍以内の出現で卵円孔開存と考えられた.RLs陽性の14例における頸動脈エコーによる診断では,10例が陽性となり4例が陰性であった(感度71%,特異度90%).一方,頸動脈エコーでRLsが疑われた症例は14例であり,このうちTEEでRLsを確定できなかったのが4例認められた.本検討では頸動脈エコーでRLs陰性となった症例があるが,頸動脈エコー時のValsalva負荷不十分,TEEにおけるアーチファクトなどが考えられる.一方,頸動脈エコーでのみRLs陽性であった例では,頸動脈粥腫病変からの栓子,TEEでの見落としなどが推察される.TEEは直接的な観察によりRLs診断が可能であり,ゴールドスタンダードであるが,食道動脈瘤の存在や,高齢者では施行が困難となる場合もある.本検討結果からは,頸動脈エコーによるRLs診断では,高い特異度が得られており,スクリーニング検査として有用である可能性がある.
【結論】
頸動脈エコーによるRLs診断はスクリーニングとして有効であり,本検査で陽性となった症例ではTEEが不要であると推察され,TEE禁忌症例に対しても有効であると考えられる.