Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎

(S512)

超音波加温による生体兎の脂肪肝の超音波速度変化画像

Ultrasonic Velocity-Change Images of Fatty Liver in Living Rabbit by Ultrasound Warming

堀中 博道, 泉川 悠, 真野 和音, 木村 亮介, 和田 健司, 松中 敏行

Hiromichi HORINAKA, Yu IZUKAWA, Kazune MANO, Ryousuke KIMURA, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA

大阪府立大学工学研究科

Deparment of Engineering, Osaka Prefecture University

キーワード :

【目的】
脂肪肝は,潜在的には国民の3人に1人がかかっているといわれる生活習慣病の一つである.明確な症状がないために発見が遅れる場合が多く,初期段階で脂肪肝が発見できる装置が望まれている.本研究では,無侵襲,簡便・安価で健康診断にも適用でき,初期段階の脂肪肝も診断できる装置の開発を目的としている.
【方法・結果】
超音波速度の温度依存性は生体物質によって大きく異なることが知られている.したがって,組織の加温による超音波速度変化を画像化することで,生体組織の物質識別も行うことができ,内臓脂肪の分布を描出できると考えられる.我々は,以前,超音波速度変化映像法を利用して光吸収組織を識別するために,加温に赤外光を用いていたが,ヒトへの適用を考え,より深部で超音波速度変化画像を得るために,加温にも超音波を利用することを検討した.既に,寒天や鶏肉内部に脂肪分布をもつファントムを作製し,超音波による加温を行い,超音波速度変化画像として深部の脂肪分布を描出できることを確認している.本映像法の有効性を検証するために,今回は,大阪市立大学医学研究科と共同研究を行い,麻酔下のウサギを用いて実験を行った.標準の餌で飼育されたウサギと栄養価の高い餌で飼育されたウサギを用意し,体表から通常の超音波Bモード画像と超音波速度変化画像を得た.加温用超音波の強度は安全基準内の1W/cm2,照射時間は20秒とした.Fig.1 (a)に,標準の餌で飼育されたウサギ(SD)と栄養価の高い餌で8週間飼育されたウサギ(HFD-8W)の肝臓部分の超音波Bモード画像の例を示す.Bモード画像では両者の間に差はみられない.(b)に超音波加温の前後のRFデータから構築されたSDとHFD-8Wの超音波速度変化画像の例を示す.(b)の上図は超音波加温によって速度が増加した領域を,下図は減少した領域を示す.超音波加温によってSDは速度が増加した領域が僅かに多く,HFD-8Wでは速度が減少した領域が大きいことを示しており,脂肪の含有量が多いことを示している.実験では,さらに,脂肪の含有量を定量的に評価するために,超音波速度変化画像における速度変化量のヒストグラム表示や摘出肝での速度変化の測定も行なっている.
【結論】
超音波速度変化画像は麻酔下のウサギの肝臓の脂肪割合を反映しており,無侵襲で簡易な脂肪肝診断装置の実現の可能性が示された.