Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S508)

肋骨骨折における超音波検査と胸部単純X線の描出能について

Detectability of rib fracture by ultrasonography and chest X-ray

杉山 髙1, 中村 元哉1, 佐藤 慎祐1, 氏次 初枝1, 梅原 慶太2, 土井 俊2

Koh SUGIYAMA1, Motoki NAKAMURA1, Shinsuke SATOH1, Hatsue UJITSUGU1, Keita UMEHARA2, Shun DOI2

1浜松南病院エコー室, 2浜松南病院整形外科

1Department of Ultrasound medicine, Hamamatsu South Hospital, 2Department of Orthopedic surgery, Hamamatsu South Hospital

キーワード :

【はじめに】
肋骨骨折が疑われた場合,胸部単純X線(以下X線)が最初に選択される現状にある.しかし,骨折と他の肋骨との重なりが骨折診断への妨げになることもしばしばみられる.肋骨骨折を超音波で検査した場合の骨折所見,超音波で肋骨骨折と診断されたものに対しX線での骨折による転位の検出率および骨折部位の表示について検討した.
【対象および方法】
対象は,2006年8月から2011年12月までの64ヶ月間に肋骨骨折が疑われ超音波検査を施行したものは83名あり,この内,肋骨骨折と診断された44名(男性24名,女性20名),平均年齢64歳(24歳から84歳)で,骨折80箇所を対象とした.方法は肋骨骨折における超音波所見を明らかにし,超音波で骨折所見が認められたものに対し2方向撮影で得られたX線フイルムまたは高精細モニターで,骨折による転位の有無と超音波による骨折部位の表示について検討した.なお,装置は東芝社製の超音波診断装置Xalio(SSA-660A),7.5MHzリニア探触子を用いた.
【結果】
超音波による肋骨骨折像は骨折段差(step signという)と骨表面のecho free space(FS)であった.骨折総数は50名あり,右肋骨骨折が35箇所,左は37箇所の合計72箇所あった.この内,X線と超音波検査が同時に行われたものは35名(57箇所)あり,X線で骨折指摘ありが29箇所(51%),骨折指摘なしが28箇所(49%)あった.超音波検査で骨折部位の表示は左右肋骨を時計軸に見立てたもので,左肋骨は胸骨側より左半周を12時から6時(胸椎),右肋骨は胸椎側より右半周の6時から12時(胸骨)とした.左肋骨では2時方向の15箇所,3時方向の13箇所に骨折が多く認められた.右肋骨では10時方向の骨折が9箇所あり,7時方向が8箇所あった.X線による骨折の非描出例では10時方向が5箇所,2時方向が12箇所あった.
【考察】
超音波でstep signは肋骨骨折の有力な所見の1つであるが,X線で肋骨骨折の指摘ありでみると,最大3mm,最小0.4mm,平均1.4mmで,超音波でみるステップサインの差が小さくても大きくてもX線での描出能に明らかな有意差はみられなかった(p=0.158).肋骨骨折におけるX線と超音波の感度についてGriffithらは,X線15%,エコー90%と報告しているが,自験では超音波で骨折の指摘があってもX線では49%に骨折による転位の指摘はできなかった.肋骨エコー検査は簡便である反面,得られる画像は6cmほどで骨の部分的領域しか表現できないため肋骨全体における骨折の位置関係を示すのに問題があった.これをX線のように分かり易く表示する方法として左右肋骨を円形とみなし時計軸で表現したことで,客観性,再現性を得ることができたと考えている.
【結語】
骨折エコー所見はstep signと骨表面のFS(血腫)および同部位の圧痛であった.超音波で骨折を認めても,X線による骨折の非描出例は49%あった.骨折部位の表示は時計軸を用いたことで客観性ある骨折の位置関係を知ることができ経過観察に役立つと考える.肋骨骨折が疑われX線ではわからない場合,超音波検査を積極的に行うことがよいと考えられた.