Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
頭頸部:頭頸部

(S502)

頭頸部扁平上皮癌頸部リンパ節転移に特徴的な超音波像

Ultrasonographic Findings of Cervical Lymph Node metastasis in Patients with Head and Neck Squamous Cell Carcinoma

古川 まどか1, 古川 政樹2, 久保田 彰1, 八木 宏章1

Madoka FURUKAWA1, Masaki FURUKAWA2, Akira KUBOTA1, Hiroaki YAGI1

1神奈川県立がんセンター頭頸部外科, 2横浜市立大学附属市民総合医療センター医療情報部

1Department of Head and Neck Surgery, Kanagawa Cancer Center, 2Division of Medical Informatics, Yokohama City University Medical Center

キーワード :

【目的】
頭頸部扁平上皮癌は頸部リンパ節転移をきたしやすく,転移の有無や広がりが予後を決定する因子となる.超音波診断は,CTでは診断が難しいとされている径10mm未満のリンパ節において,個々のリンパ節の超音波像をもとに転移の有無を検討することが可能である.近年の超音波診断装置の進歩による解像度や,カラードプラ画像の質向上,エラストグラフィの普及などによって,より多くの情報を頸部リンパ節の超音波像から得ることができるようになった.今回,頭頸部扁平上皮癌頸部リンパ節において,転移の有無を判断するための診断基準に使用可能な,転移リンパ節に特徴的な超音波像について検討を行った.
【対象および方法】
2009年4月より,2011年6月までに,術前治療なく頸部手術を施行した頭頸部扁平上皮癌23症例において,術前に超音波診断で検出し術後病理検査で転移の有無を確認できた頸部リンパ節56 個(転移陽性29個,陰性28個)について,リンパ節の大きさ,形状,内部エコー,血流,硬さを評価し,これらの項目が,診断装置や検査条件の違い,転移病巣に壊死や嚢胞変性などの修飾が加わっても診断基準の要素となりうるかどうか検討した.使用した診断装置は,Hivision900(日立アロカ)である.
【結果と考察】
リンパ節の大きさでは,厚みが最も敏感に転移によって変化しており,転移陽性リンパ節のほとんどが厚み6mm以上であった.形状としては,転移陽性リンパ節では厚みが増加するが,長径は変化しないため,最大割面の超音波像が楕円形から球形に近い傾向があった.内部エコーは,転移陽性リンパ節では,リンパ節内部の一部に転移病巣を形成し,その一部または全部が壊死やのう胞化する傾向があり,超音波像でもリンパ節内部の一部または全部に占拠性病変が確認できる症例が多かった.壊死やのう胞部分も正常なリンパ節構造とは異なる超音波像として捉えることができた.血流では,転移陰性リンパ節ではリンパ門部のみにわずかな血流を認めるだけであったが,転移陽性リンパ節では,リンパ門からの血流が占拠性病変によって消失または偏在し,占拠病変に新たな血流がみられるものが多かった.エラストグラフィ(Real-time tissue elastography)を用いた硬さ診断では,転移陽性リンパ節が,転移陰性リンパ節と比べて硬いものが多い傾向がみられた.
【結論】
頭頸部癌の頸部リンパ節において,リンパ節の厚み6mm以上で,内部の占拠性病変がBモード画像や血流イメージングで確認されるもの,エラストグラフィで硬く表示されるものは転移陽性の所見と考えられ,今後これらの情報を組み合わせた超音波によるリンパ節転移診断手順を作成できる可能性が示された.