Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
頭頸部:頭頸部

(S502)

頸部におけるIgG4関連疾患の超音波像:Mikulicz病・Küttner腫瘍とRiedel甲状腺炎

Sonographic findings of IgG4-related diseases in the neck: Mikulicz disease, Küttner tumor and Riedel thyroiditis.

松永 宏明, 紺野 啓, 神田 美穂, 津田 恭子, 宮本 倫聡, 鯉渕 晴美, 藤井 康友, 谷口 信行

Hiroaki MATSUNAGA, Kei KONNO, Miho KANDA, Kyouko TSUDA, Michiaki MIYAMOTO, Harumi KOIBUCHI, Yasutomo FUJII, Nobuyuki TANIGUCHI

自治医科大学臨床検査医学

Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University

キーワード :

【はじめに】
2001年のIgG4関連自己免疫性膵炎の報告および,2008年の日本シェーグレン症候群研究会のIgG4関連ミクリッツ病の診断基準発表をきっかけとして,近年IgG4関連疾患の臨床報告が増加している.今回われわれは,頚部腫大の精査目的に超音波検査を行い,最終的にIgG4関連疾患と診断された12例につき,その超音波所見について検討したので報告する.
【対象と方法】
2005年9月から2011年11月に自治医科大学臨床検査部で頚部超音波検査を行い,唾液腺のびまん性変化をみとめ,高IgG4血症(135mg/dl以上)が確認された12症例に対し,超音波像を中心に検討した.
【結果】
内訳は片側顎下腺腫大のKüttner腫瘍1例,Riedel甲状腺炎とMikulicz病の合併1例,自己免疫性膵炎とMikulicz病の合併1例,Mikulicz病のみが9例であった.全例で顎下腺に病変を認め,3例で耳下腺にも病変を認めた.年齢は54歳から76歳(66.6±7.0歳)で,男性10名,女性2名であった.血清IgG4値は163〜2190mg/dl(628.3±568.1mg/dl)であった.生検もしくは摘出により病理学的検討が行われたのはKüttner腫瘍1例とRiedel甲状腺炎合併例1例を含む5例で,うち4例でMikulicz病診断基準に見られるIgG4陽性形質細胞浸潤の基準(強拡大5視野でIgG4+/IgG+が50%以上)を満たした.抗SS-A抗体および抗SS-B抗体は10例で測定され,いずれも陰性であった.顎下腺病変の超音波像は,網目状高エコーを伴うびまん性の実質のエコーレベルの低下,または全体に広がる多数の小結節様低エコー病変であった.カラードプラでは12例中6例で血流シグナルの増加を認めた.耳下腺では内部エコー不均一なびまん性腫大(2例)あるいは顎下腺と同様の多数の小結節様の低エコー病変(1例)が観察された.Riedel甲状腺炎例の甲状腺では,びまん性の甲状腺腫大があり,実質エコーレベルの不均一な低下を認めた.血流シグナルの上昇・低下は認めず,慢性甲状腺炎様の超音波像であった.
【考察】
厚生労働省科学研究梅原班はIgG4関連多臓器リンパ節増殖症候群(IgG4+MOLPS)として,唾液腺のほかに膵・胆管・肝・後腹膜・肺・乳腺・縦隔・腎・下垂体・甲状腺・その他の臓器の病変にも当てはまる診断基準を提案しており,片側性の唾液腺腫大であるKüttner腫瘍もIgG4関連疾患として位置づけられている.しかし,IgG4関連ミクリッツ病の診断基準では持続性両側性2ペア以上の顎下腺,耳下腺,涙腺の腫大が必須条件となっている.これらの全身臓器の中でも,唾液腺病変は自覚症状および触診により指摘されやすく,体表超音波検査における唾液腺病変の発見が診断の契機となりやすいと考えられるが,今回の検討から,網目状高エコーを伴うびまん性の実質のエコーレベルの低下,または多数の小結節様低エコー病変が本症の超音波における特徴的所見と考えられた.本症は,初期のステロイド反応性が比較的良好であることが知られているが,Sjögren症候群とは異なり男性に多く,抗SS-A抗体ならびに抗SS-B抗体陰性であることもまた診断に有用であり,上記の超音波所見を含めこうした所見を満たす症例では積極的に血清IgG4の定量を行い,すみやかな診断・治療に結びつけることが重要と考えられた.