Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺3(組織弾性評価)

(S500)

超音波検査による乳癌術前化学療法の効果予測

Ultrasonographic prediction of chemotherapeutic effect on preoperative chemotherapy for breast cancer

中川 摩耶1, 西尾 進1, 山田 博胤1, 3, 中川 美砂子2, 武知 浩和2, 川上 行奎2, 森本 雅美2, 佐田 政隆1, 3, 丹黒 章2

Maya NAKAGAWA1, Susumu NISIO1, Hirotsugu YAMADA1, 3, Misako NAKAGAWA2, Hirokazu TAKECHI2, Yukikiyo KAWAKAMI2, Masami MORIMOTO2, Masataka SATA1, 3, Akira TANGOKU2

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院食道・乳腺甲状腺外科, 3徳島大学病院循環器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Esophageal, Breast and Thyroid Surgery, Tokushima University Hospital, 3Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

【背景】
近年,乳癌治療において従来は術後に行っていた化学療法を術前に行う術前化学療法が実地臨床の場で広く行われている.従来行われてきた術後補助化学療法と比較して,患者自身が治療効果を短期間に確認できるだけでなく微小転移巣に対して全身的な治療を早期に行え,臨床試験の結果から腫瘍サイズの縮小により乳房温存術の適応が拡大すること,術後化学療法に比較して無再発生存率や生存率は改善しないが,組織学的に腫瘍が消失した場合には生存率が改善するなどの利点が証明され,アンスラサイクリンとタキサンの順次投与が組織学的癌消失率において優れているということが知られている.術前化学療法において治療効果の判定が短期間で得られることは,新しい化学療法レジメンの感受性を評価する上においても有益である.
【目的】
乳癌術前化学療法を施行した乳癌患者を対象に,早期に効果予測できるパラメータについて検討すること.
【方法】
TS組織学的に乳癌であることが確認されている腫瘍径(T)2cm以上の臨床病期ⅡA〜Ⅳ期の原発性乳癌患者で2010年10月から2011年11月までの乳癌術前化学療法を施行した24症例を対象とした.治療レジメンは倫理委員会で承認された臨床試験であり,術前化学療法は全8クールとした.-1/ Docetaxal療法(Docetaxalを1dayに投与,TS-1を1-14day経口投与)3週間を1クールとして4クール行い,4クール終了時点で超音波・MRIを施行し,PR(RECIST基準による)が得られた場合は本療法を更に4クール施行した.4クール終了後に部分奏功が得られず,Her2過剰発現がない場合はEC療法(EpirubicinとCyclophosphamideを1day投与)を,Her2過剰発現がある場合はHT療法とPaclitaxalを投与し,施行した.使用装置は日立・アロカ社製HI VISION Preirus,探触子は高周波リニアプローブL75(周波数5・13MHz)を用いた.治療前,1,8クール前に3方向での腫瘍径とelastographyで腫瘍と皮下脂肪織の歪みの比FLR(Fat Lesion Ratio)を算出し,腫瘍径の縮小率とFLRの変化率を算出した.また,腫瘍に流入する動脈血流のRI・PI値を算出し,Color flow mapping(CFM)により定性評価を行った.CFMは2: high-frequency signal,1: low-frequencysignal,0: no blood flowの3つに分類した.治療前と8クール目における腫瘍縮小率が70%以上をPR(部分奏功)群,70%以下をSD(安定)群として,各種指標を比較した.
【結果】
対象の平均年齢は55±12歳で,PR群:55±12歳,SD群:58±14歳であった.乳癌の内訳は,浸潤性硬癌7例,浸潤性充実性腺癌13例,浸潤性小葉癌1例,浸潤性粘液癌1例,浸潤性乳頭腺管癌1例であった.PR群の4クール目におけるFLR変化率はSR群に比べて有意に大きかった(PR vs. SD 48.7±24.3% vs. 25.6±13.1%, p=0.002).一方,両群におけるCFM(PR vs. SD 1.6±0.6 vs. 1.5±0.7),RI値(PR vs. SD 0.7±0.2 vs. 0.6±0.2),PI値(PR vs. SD 1.4±0.6 vs. 1.1±0.4)に有意差を認めなかった.
【結語】
Elastographyを用いると,化学療法の経過にともなう腫瘍組織弾性の変化が観察でき,化学療法の効果を定量的に判定できる指標を得ることができる.Elastographyから算出されるFLRは術前化学療法における効果判定の早期予測に有用な可能性がある.