磯部 幸子¹, 戸崎 光宏², 山口 実紀¹, 小川 ゆかり¹, 本間 加奈子¹, 加藤 寿美子¹, 里見 理恵¹, 藤田 あゆみ¹, 斎藤 雅博³

Sachiko ISOBE¹, Mitsuhiro TOZAKI², Miki YAMAGUCHI¹, Yukari OGAWA¹, Kanako HONMA¹, Sumiko KATOU¹, Rie SATOMI¹, Ayumi FUJITA¹, Masahiro SAITO³

¹亀田メディカルセンター超音波検査室, ²亀田メディカルセンター乳腺センター／乳腺科, ³持田シーメンスメディカルシステム

¹Division of Ultrasonographic Examination, Kameda Medical Center, ²Breast Center, Kameda Medical Center, ³Mochida Siemens Medical Systems

キーワード :

【目的】
現在,乳腺のエラストグラフィは病変の良悪性鑑別の補助診断として普及している．従来のエラストグラフィは,用手的な圧迫で組織の歪みを画像化する方法が一般的だが,施行者間での技量の格差,取得画像の再現性が課題とされている．近年では,音波放射力（ARFI）を利用して,音響的に組織を圧迫して歪みを画像化する方法が開発された．ACUSON S2000（Siemens社製）に搭載されたVirtual Touch Tissue Imaging（VTTI）は,柔らかい組織ほど変位が大きく高輝度に表示され,硬い組織では変位が小さく低輝度に表示される．今回VTTI画像で低輝度に表示される病変に焦点を置き,良悪性の鑑別に対する有用性を検討した．
【対象と方法】
細胞診または組織診断の得られた腫瘤性病変195例のうち,VTTIで低輝度に表示された良性30例,悪性100例を対象とした．まず,VTTIで病変の低輝度範囲がB-modeより大きく,小さい,または同等の3群を視覚的に評価した．次に,B-modeで病変の横径を計測し,この計測ラインをVTTIの画像上にも反映させ,両画像での病変の大きさを比較した．
【結果】
VTTIで病変の低輝度範囲がB-modeより大きく表示された病変は67例で,全て悪性であった．組織型は硬癌52例,乳頭腺管癌6例,浸潤性小葉癌6例,髄様癌1例,アポクリン癌1例,腺様嚢胞癌1例であった．病変の大きさはB-modeで2.7mm〜23.3mm（平均11.5mm）,VTTIでは6.6mm〜32mm（平均14.9mm）,B-modeとVTTIでの病変の大きさの差は1.6mm〜8.7mm（平均3.5mm）であった．病変の低輝度の範囲がB-modeより小さく表示されたのは7例で,全て良性であった．組織型は線維腺腫2例,乳腺症1例,細胞診で良性の判定が4例であった．病変の大きさはB-modeで7.2mm〜20.5mm（平均11.9mm）,VTTIは5mm〜17.6mm（平均9.3mm）で,B-modeとVTTIの病変の大きさの差は2mm〜3.1mm（平均2.6mm）であった．VTTIとB-modeで病変が同等な大きさで表示されたのは,悪性33例（硬癌16例,充実腺管癌6例,乳頭腺管癌2例,粘液癌1例,非浸潤性乳管癌7例,非浸潤性小葉癌1例）,良性23例（線維線腫7例,乳管内乳頭腫3例,乳腺症3例,細胞診で良性の判定が10例）であった．B-modeとVTTIでの病変の大きさの差は,悪性で0mm〜1.0mm（平均0.4mm）,良性で0mm〜1.2mm（平均0.4mm）であった．
【考察】
VTTIは定性的な硬度判定であり,VTTIとB-modeで同等な大きさに表示される病変には定量的な硬度判定もあわせて行う必要性があると考える．しかし,VTTIでB-modeより大きく表示された病変はすべて悪性,小さい病変はすべて良性であったことから,VTTIとB-modeとの大きさの比較は,良悪性の鑑別に有用と考えられた．