Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺2

(S498)

乳房自動スキャンとHand-held USにおける非腫瘤性病変の描出率の検討

Comparison of the detection rate of non-mass lesion between automated breast US and hand-held US

小原 正巳1, 戸崎 光宏2, 磯部 幸子1, 山口 実紀1, 小川 ゆかり1, 本間 加奈子1, 里見 理恵1

Masami KOHARA1, Mitsuhiro TOZAKI2, Sachiko ISOBE1, Miki YAMAGUCHI1, Yukari OGAWA1, Kanako HONMA1, Rie SATOMI1

1亀田メディカルセンター超音波検査室, 2亀田メディカルセンター乳腺センター/乳腺科

1Ultrasound Center, Kameda Medical Center, 2Breast Center, Kameda Medical Center

キーワード :

【はじめに】
乳房超音波検査は,乳腺疾患の診療には必須の検査である.通常の乳房超音波検査(以下Hand-held US)は,施行者の熟練度により検査の精度が左右されてしまうことがあり,検査時間や病変の検出率の差が生じてしまうことがある.この問題を克服する為に開発された技術が乳房自動スキャン(Automated Breast Volume Scanner 以下ABVS)である.今回,腫瘤よりも病変の検出や診断が難しいと考えられる非腫瘤性病変について,両者の検出能につき検討したので報告する.
【方法】
対象はABVSとHand-held USを併用し検査を行った女性患者149名である,平均年齢は,52.0歳(23〜82歳)であった.使用機種は,シーメンス社製ACUSON S2000 ABVSである.ABVSとHand-held USは同一技師が検査を施行し,Hand-held USの所見は施行した技師が所見を記載した.ABVSの所見は異なる技師が専用のワークステーションで読影を行った.検査施行後,約1年後にカルテの見直しを行い検討した.
【結果】
ABVSとHand-held USの病変の一致率は84%(354/421病変)であった.非腫瘤性病変では,両者の一致率は72.4%(55/76病変)であった.非腫瘤性病変を呈した乳癌は6病変あり,限局性低エコー域が3病変,乳管拡張が1病変,構築の乱れが2病変であった.この6病変の乳癌は,ABVSとHand-held USの両者で描出可能であった.Hand-held USのみで検出された非腫瘤性病変は21病変で,限局性低エコー域が14病変,乳管拡張が4病変,構築の乱れが3病変であった.これらのカテゴリーは,カテゴリー3が16病変,カテゴリー4aが5病変であった.また,限局性低エコー域の14病変には,up-grade所見(区域性分布,点状高エコー,ductal change)を認めなかった.乳管拡張の4病変は,内腔に充実エコーを伴わない多発性や単一性の乳管拡張であった.
【結論】
非腫瘤性病変を呈した乳癌6病変は,いずれもABVSとHand-held USの両者で検出可能であった.このことより,ABVSはHand-held USに劣ることはなく,今後の乳癌診療への利用が期待される.また,ABVSで指摘困難であった21病変は,多くがカテゴリー3の良性を示唆する所見であり,Hand-held USの擬陽性の可能性が高い.ABVSは,Hand-held USよりは強い圧迫を加えながらスキャンする装置であるため,淡く不明瞭な限局した低エコー域を呈する良性所見が,圧迫により病変として視認できなかった可能性がある.つまり,Hand-held USでの擬陽性症例を減らすことができる可能性が示唆される.この仮説を検証すべく,今後の更なる検討が必要と考える.