Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺2

(S498)

粒子法を用いた乳房大変形解析に関する基礎研究

Basic Research for Large Deformation Analysis of Breast Tissue using Particle Method

志野 亮作1, 越塚 誠一1, 伊藤 広貴1, 小笠原 正文2, 劉 磊3

Ryosaku SHINO1, Seiichi KOSHIZUKA1, Hirotaka ITO1, Masafumi OGASAWARA2, Lei LIU3

1東京大学大学院工学系研究科, 2GEヘルスケア・ジャパン超音波研究開発部, 3GEヘルスケア・ジャパン超音波技術部

1Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, 2Ultrasound Research and Development, GE Healthcare, 3Ultrasound Engineering, GE Healthcare

キーワード :

【緒言】
日本は先進国の中で唯一乳がんの罹患率と死亡率が増加傾向にある.乳がんの検診には現在,マンモグラフィー,超音波,MRI等の検査機器が用いられている.近年高感度で病変検出能力の高いMRI造影画像をリアルタイム超音波画像とフュージョン表示(Volume Navigation機能,GE Healthcare Japan)することにより,従来困難だった初期の乳がんに対する高精度の検査,治療が可能となることが期待されている.しかし,乳房の形状は撮像体位(MRI:仰臥位,超音波:腹臥位)により大きく変化するため,両者の画像の位置合わせは非常に困難である.以上のような状況に鑑み,本研究では粒子法の一種であるMPS(Moving-Particle Simulation)法を用いて乳房変形を解析し,得られた乳房の変形を基に体位の異なる画像を補正表示する手法を開発することを目的としている.MPS法は既存の構造解析手法と異なりメッシュを生成せずに解析を行うことが出来るため,生体特有の大変形現象の模擬が容易であり,医療への応用が期待されている.今回は単純形状モデルを対象としてMPS法による弾性体解析を行い,既存の構造解析手法である有限要素法(FEM)の解析結果と定量的に比較することによってMPS法による乳房変形解析の妥当性を評価する.
【方法と結果】
半径50mmの半球形状を解析対象として,FEM及びMPSにて解析を行った.対象は微小変形等方線形弾性体とし,物性値は脂肪の文献値(ヤング率1kPa, 密度919.6 kg/m3)を設定した.FEMの自由度数は十分大きな2296818とした.MPSの粒子径は0.002mmと設定し,総粒子数は43349とした.ポアソン比を0.0から0.49まで変化させ,頭頂部の変位をFEMとMPSで比較した.その結果,ポアソン比0.0においてはFEMとMPSにおいて変位量がほぼ一致するが,ポアソン比の増大に伴いFEMとMPSの変位量に差が生じ,ポアソン比0.49においてFEM解析において6.4mmの変位に対しMPSでは1mmの差が生じた.
【結論】
MPS法による乳房変形解析の妥当性を検証するため,単純形状としての半球を解析対象として弾性解析を行い,結果をFEMと定量的に比較した.今後は実際に腹臥位撮像されたMRI乳房画像を用いて乳房変形をシミュレーションし,得られた解(変形)に合わせて再構成された画像と仰臥位のMRI乳房画像とを比較することによって乳房変形解析の妥当性を検証する.また組織セグメンテーションの数値計算精度に与える影響も並行して検討する予定である.