Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺2

(S495)

甲状腺低分化癌の超音波像の検討

Ultrasonographic features of poorly differentiated thyroid carcinoma

藪田 智範1, 太田 寿2, 福島 光浩1, 小林 薫1, 網野 信行3, 宮内 昭1

Tomonori YABUTA1, Hisashi OTA2, Mitsuhiro FUKUSHIMA1, Kaoru KOBAYASHI1, Nobuyuki AMINO3, Akira MIYAUCHI1

1隈病院外科, 2隈病院臨床検査科, 3隈病院内科

1Surgery, Kuma Hospital, 2Clinical Laboratory, Kuma Hospital, 3Internal Medicine, Kuma Hospital

キーワード :

【目的】
甲状腺低分化癌は「高分化型乳頭癌ないし濾胞癌と未分化癌との中間的な形態像および生物学的態度を示す濾胞上皮由来の悪性腫瘍」と定義される.その予後は未分化癌よりは良好であるが,分化癌よりは明らかに不良であり,治療に難渋することがある.低分化癌の術前診断について,画像診断の研究報告はほとんどない.術前の穿刺吸引細胞診で低分化癌を疑うことができる場合もあるが,低分化成分を含む部位からの十分な細胞採取と専門の病理医による診断が不可欠であり,どの施設でもできるものではない.術前に低分化癌を疑うことができれば,甲状腺全摘を行ったり,広範囲なリンパ節郭清を追加するなど術式にも影響する可能性がある.そこで当院で経験した低分化癌の超音波検査所見について,特徴的な所見があるかどうかを検討した.
【対象と方法】
2008年1月から2010年12月までに当院で施行された甲状腺悪性腫瘍初回手術症例3503名のうち,術後の病理組織検査で低分化癌と診断された症例について,その超音波検査所見をretrospectiveに検討した.病理診断は甲状腺癌取扱い規約第6版に従った.
【結果】
低分化癌と診断された症例は76名(2.2%)であり,そのうち乳頭癌の核所見を有し乳頭状構造を背景に持つ症例(乳頭癌型)は51名,濾胞状構造を背景に持つ症例(濾胞癌型)は19名であった.多くの症例で形状は不整,境界性状は不明瞭粗雑,内部エコーは低,不均質であり,3名を除きほとんどが充実性であった.微細高エコーを伴う症例は18名(24%),粗大石灰化を伴う症例は24名(32%),卵殻状石灰化を伴う症例は13名(17%)であった.乳頭癌型の低分化癌では,乳頭癌が疑われることが多かったが,乳頭癌に特徴的な微細高エコー像を呈する頻度が少なく,内部血流が多い傾向にあった.また小さい腫瘍でも形状がきわめて不整である症例が多い印象であった.濾胞癌型の低分化癌では,濾胞性腫瘍の超音波像に類似し,境界性状がきわめて粗雑であることから濾胞癌が疑われる症例が多かった.さらに腫瘍内部に小結節構造(nodule in nodule)が見られる頻度が比較的高く,また卵殻状石灰化を中心に周囲に拡大する像が見られた.一方で乳頭癌とも濾胞癌とも区別のつかない超音波像を呈する腫瘍,あるいは悪性リンパ腫類似像を呈する腫瘍も見られた.
【考察】
低分化癌の超音波所見は,乳頭癌を基礎とする乳頭癌型低分化癌および濾胞性腫瘍を基礎とする濾胞癌型低分化癌に分けると考えやすい.石灰化の有無および性状,腫瘍内小結節構造は重要な所見であり,小さくても形状不整の結節は注意が必要である.また典型的な高分化癌の超音波像とは異なる像が見られた場合も低分化癌を疑うべきかもしれない.