Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺1

(S492)

未成年者甲状腺乳頭癌の超音波所見の検討

Ultrasonographic findings of papillary throid carcinomas in children and adolescents

檜垣 直幸1, 村上 司1, 西嶋 由衣1, 野口 仁志1, 内野 眞也2, 山下 裕人3, 野口 志郎2

Naoyuki HIGAKI1, Tsukasa MURAKAMI1, Yui NISHIJIMA1, Hitoshi NOGUCHI1, Shinya UCHINO2, Hiroto YAMASHITA3, Shiro NOGUCHI2

1野口病院内科, 2野口病院外科, 3野口病院病理

1Internal Medicine, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 2Surgery, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 3Pathology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【背景と目的】
小児甲状腺癌は比較的稀な疾患であり,成人例と比較すると診断時にリンパ節転移,肺転移を伴う頻度が高いことや,生命予後は良好とされることなど臨床的特徴に成人と差異がみられる.超音波検査は甲状腺診療おいて必須の検査であり,甲状腺結節はその特徴所見から良悪性の鑑別が可能なことが多い.今回当院における未成年者甲状腺乳頭癌症例の超音波所見について検討を行った.
【対象と方法】
2004年7月から2011年10月までの期間中,当院で手術療法が施行された未成年者甲状腺乳頭癌症例35例を対象とし,それらの術前超音波所見についてレトロスペクティブに検討を行った.なお,肺転移は35例中4例(11.4%)にみられた.
【結果】
対象の年齢中央値は17歳(10〜19歳),男性4例,女性31例であった.35例中9例(25.7%)は術前超音波検査で病変が描出されていなかった.それらの症例はバセドウ病術後に偶然発見された7例,濾胞性腫瘍術後に合併が確認された2例であった.それらの病変はいずれも微小癌であった.術前超音波検査で病変が描出されていた26例のうち,いわゆる通常型乳頭癌は22例(74.6%)で,4例(15.4%)はびまん性硬化型乳頭癌であった.通常型乳頭癌の腫瘍長径中央値は19.5mm(4〜65mm)であった.超音波検査で,形状不整が18例(81.8%),境界不明瞭が16例(72.7%),内部低エコーが20例(90.1%),内部エコー不均質が20例(90.1%),境界部低エコー帯の欠如が22例(100%),微細多発高エコーが8例(36.4%)にみられ,17例(77.3%)が充実性結節であった.術前超音波検査で悪性を疑うことができた症例は22例中17例(77.3%)であり,術前超音波検査と細胞診を総合的に判断して22例中20例(90.9%)で術前に悪性と診断することができていた.頚部リンパ節転移は22例中20例(90.9%)に確認されたが,うち15例では術前超音波検査で転移リンパ節転移が疑われていた.術前に診断し得なかった2例の術前超音波診断は濾胞性腫瘍であり,術後組織でも濾胞成分が優位な所見がみられた.びまん性硬化型乳頭癌4症例は全例にリンパ節転移と考えられる所見がみられ,超音波所見,細胞診で悪性と診断されていた.
【結語】
未成年症例においても成人例と同様に超音波検査が診断に有用と思われた.未成年例では腫瘍径が大きく,頚部リンパ節転移も多くみられた.またびまん性硬化性乳頭癌にも留意しておく必要があると考えられた.今回の検討では10歳未満の症例がなく,多くが思春期以降の症例であったため,より若年の小児例については検討できなかった.