鯉渕 晴美¹, 紺野 啓¹, 尾本 きよか², 神田 美穂¹, 津田 恭子¹, 宮本 倫聡^{1, 3}, 松永 宏明¹, 藤井 康友¹, 谷口 信行¹

Harumi KOIBUCHI¹, Kei KONNO¹, Kiyoka OMOTO², Miho KANDA¹, Kyoko TUDA¹, Michiaki MIYAMOTO^{1, 3}, Hiroaki MATSUNAGA¹, Yasutomo FUJII¹, Nobuyuki TANIGUCHI¹

¹自治医科大学臨床検査医学, ²自治医科大学附属さいたま医療センター臨床検査部, ³自治医科大学内科学講座内分泌代謝部門

¹Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University, ²Department of Clinical Laboratory, Jichi Medical University Saitama Medical Center, ³Division of Endocriology and Metabolism, Department of Medicine, Jichi Medical University Saitama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
小児の甲状腺癌はまれであるが,甲状腺内に腫瘤が存在すればそれが悪性腫瘍である頻度は成人では5％であるのに対し,小児では20-25％という報告^1）もあり,甲状腺腫瘤の良悪性の判定は非常に重要である．小児の甲状腺癌のうち70-90％は乳頭癌^2）であるが,超音波検査所見に関する報告は少ない．今回われわれはこれまで当院で経験した甲状腺乳頭癌の4症例について,その超音波所見を中心に検討したので報告する．
【症例1】
13歳,女児．学校検診にて甲状腺腫を指摘され,超音波検査を施行した．超音波検査上,甲状腺右葉に5×4×6mmの周囲に点状高エコーを伴った低エコー腫瘤を認めた．1年後のフォローアップの超音波検査でこの腫瘤は7×6×19mmと増大傾向を認めたため,穿針吸引細胞診を施行し乳頭癌が疑われた．甲状腺全摘を施行し,病理学的に乳頭癌と診断した．
【症例2】
14歳,女児．学校検診にて甲状腺腫を指摘され,超音波検査を施行した．超音波検査上,甲状腺右葉に境界やや不明瞭で形状不整,内部不均一な29×19mmの低エコー腫瘤を認め,悪性が否定できないため穿針吸引細胞診を施行し乳頭癌あるいは髄様癌が疑われた．甲状腺亜全摘が施行され,病理学的に乳頭癌と診断された．
【症例3】
13歳,女児．8歳時より頚部の腫脹を認めていた．10歳時当院で超音波検査を施行し,甲状腺右葉に5mmの不整形低エコー腫瘤を認めた．11歳時左葉下極にも10mmの内部に点状高エコーを伴う低エコー腫瘤を認め,穿針吸引細胞診を施行,classⅣとの診断であった．甲状腺全摘術を施行し,病理学的に乳頭癌と診断された．
【症例4】
18歳,女児．上腹部痛・嘔気で近医受診したところ,頚部腫瘤を指摘され当院で超音波検査を施行した．超音波検査上,甲状腺峡部に12×9×14mmの内部に点状石灰化を伴う低エコー腫瘤を認めた．穿刺吸引細胞診を施行,乳頭癌が疑われた．甲状腺峡部切除術を施行し,病理学的に乳頭癌と診断された．
【結論】
成人の甲状腺乳頭癌では,腫瘤内部に多発する微細高エコーが存在することが特徴的であり,それが乳頭癌の診断の契機になることが多い．今回我々が経験した4例のうち,3例は点状高エコーを認めたが1例は認めなかった．また4例とも形状は不整,穿刺吸引細胞診が有用であった．以上より小児では点状高エコーの存在だけではなく,不整な形状の低エコー結節を認める場合も,穿針吸引細胞診を考慮しつつ診断を進めていく必要がある．
【参考文献】
1）Corrias A, Mussa A, Baronio F et al. Diagnostic features of thyroid nodules in pediatrics. Arch Pediatr Adolesc Med .2010; 164: 714-719
2）Marilyn J. Siegel. Pediatric sonography. Philadelphia: ;Wolters Kluwer; 2011. p. 147-158