三塚 幸夫¹, 金澤 真作², 丸山 憲一¹, 橋本 優子¹, 八鍬 恒芳¹, 工藤 岳秀¹, 齊藤 芙美², 馬越 俊輔², 緒方 秀昭², 金子 弘真²

Yukio MITSUZUKA¹, Shinsaku KANAZAWA², Kenichi MARUYAMA¹, Yuko HASHIMOTO¹, Tsuneyoshi YAKUWA¹, Takahide KUDO¹, Fumi SAITO², Shunsuke MAGOSHI², Hideaki OGATA², Hironori KANEKO²

¹東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, ²東邦大学一般・消化器外科

¹Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center, ²Department of Surgery （Omori）, Division of General and Gastroenterological Surgery, Toho University

キーワード :

【背景・目的】
乳房超音波検査は,乳癌検診,乳房腫瘤の存在診断・質的診断,術前加療の評価,手術における切除範囲の検討,術後の再発チェックなど,乳癌診療において必要不可欠なものとなっている．Bモード画像による詳細な形態評価を行うことでその発育形態や腫瘤の内部性状など多くの情報を得られるが,一方で造影剤を使用して評価を行うMRIやCTなど他のモダリティーでのみ知り得る情報もある．そこで我々は,超音波造影剤を併用し高分解能の超音波検査に血流情報を加えることで,より詳細な評価が可能であるか検討を行い,その有用性を報告してきた．Sonazoid造影超音波検査（以下,CEUS）による乳房腫瘤の良悪性診断に関しては,以前の我々の検討で,腫瘤内部と周囲の染影を評価することにより,感度91.0％,特異度62.5％,正診率83.1％という結果が得られた（第18回日本乳癌学会学術総会にて報告）．乳房造影超音波検査では,不均質で比較的高輝度な乳腺の組織信号により造影信号を評価しにくいケースもあるが,組織信号を抑制する造影手法が開発され,さらなる診断精度向上が期待されている．今回我々は,組織抑制手法を用いてCEUSを施行した症例を対象に,その診断法の有用性と従来の造影手法との違いに関して検討を行ったので報告する．なお,当院では倫理委員会承認のもと,文書によるインフォームド・コンセントを得た上で,乳房腫瘤に対するCEUSを行っている．
【対象】
2010年8月から2011年10月に組織抑制手法を用いてCEUSを施行した26症例28結節（良性13結節,悪性15結節,術前加療症例は除く）を対象とした．
【方法】
Sonazoidは肝腫瘤における推奨投与量の半量を静脈内投与した．超音波診断装置はAplioXG（東芝メディカルシステムズ社製）,探触子は高周波リニアプローブ（PLT-805AT）を使用した．造影剤投与後1分間の動画をもとに,①腫瘤周囲染影の有無,②腫瘤内部染影の有無と程度,③腫瘤内部不染域の有無,④腫瘤内部への拍動性流入の有無を評価した．
【結果】
各造影所見の結果を表に示す．この結果をもとに診断フローチャートを作成したところ,感度86.7％,特異度92.3％と良好な結果が得られた．
【結論】
組織抑制手法を用いたCEUSによって,従来の造影手法より容易に腫瘤周囲や内部の染影を評価可能となり,それらを組み合わせることで乳房腫瘤の良悪性鑑別の一助となることが示唆された．