Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:体表臓器

(S489)

皮膚科領域における超音波診断の有用性

Usefullness of ultrasonography in dermatological practice

谷口 真由美1, 畠 二郎2, 竹之内 陽子1, 中武 恵子1, 岩井 美喜1, 麓 由起子1, 小島 健次1, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢3

Mayumi TANIGUCHI1, Jiro HATA2, Yoko TAKENOUCHI1, Keiko NAKATAKE1, Miki IWAI1, Yukiko FUMOTO1, Kenji KOJIMA1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学消化管内科学

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景および目的】
皮膚・軟部組織病変に対する超音波検査(以下US)は,簡便かつ非侵襲的に高分解な画像を得られるなどの長所を有し,存在および質的診断に有用であるが,その診断能を検討した報告は少ない.そこで各種皮膚・軟部組織病変の診断におけるUSの有用性を検討した.
【対象】
2010年1月から2011年7月までの間に当院で皮膚・軟部組織病変に対しUSを施行した367例中,病理組織学的に診断の確定した95例(腫瘍性病変49例:脂肪腫19例,皮膚癌5例,皮膚線維腫4例,神経鞘腫3例,悪性線維性組織球腫2例,奇形腫2例,石灰化上皮腫2例,その他悪性黒色腫など12例,非腫瘍性病変46例:粉瘤21例,炎症性粉瘤4例,転移性リンパ節4例,肉芽腫2例,その他うっ血性皮膚炎など15例).
【方法】
US施行前に外来担当医が診断を決定(以下臨床診断).検者は経験年数3〜10年の臨床検査技師5名.病変部を直接接触,音響カプラを介在,水浸のいずれかにて観察.主座,形態,血流シグナルからUS診断を決定.使用機種は東芝社製SSA-700A.プローブは12MHz,8MHz,7MHzリニアを適宜使用.確定診断は病理組織学的検索により決定し,臨床診断,US診断の各診断能を比較検討した.
【結果】
全病変に対する正診率は臨床診断45.3%(43/95),US診断67.4%(64/95),腫瘍性病変に対する正診率は臨床診断44.9%(22/49),US診断65.3%(32/49),非腫瘍性病変に対する正診率は臨床診断45.7%(21/46),US診断69.6%(32/46),炎症性病変の正診率は臨床診断55.6%(5/9),US診断77.8%(7/9)であった.最多病変は粉瘤で全体の22%を占め,その正診率は臨床診断47.6%(10/21),US診断90.5%(19/21),炎症性粉瘤は臨床診断,US診断ともに50%(2/4)であった.次に多い病変は脂肪腫で全体の20%を占め,正診率は臨床診断68.4%(13/19),US診断94.7%(18/19)であった.臨床診断誤診52例中22例(42.3%)はUSにて正診され,US誤診33例中5例(15.2%)は臨床診断で正診されていた.USで悪性と診断したが,病理診断上良性であった症例が7例存在した.また,US正診率は検者間で有意差を認めなかった.
【考察】
全病変に対するUS診断の正診率は臨床診断のそれより有意に高く(p<0.01),USにより正診率が約20%上昇する結果であった.臨床診断誤診例のうち約40%はUSにて正診されており,それらは粉瘤9例(40.9%),脂肪腫4例(18.2%),皮膚線維腫2例(9.1%),血管筋脂肪腫1例(4.5%),転移性リンパ節1例(4.5%)などであった.また,豊富な血流シグナルから悪性黒色腫を疑った母斑細胞母斑や,肥厚性瘢痕はUSで誤診していたが,肉眼的特徴から臨床診断にて正診されていた.USで悪性と診断し,病理上良性であった症例は血流シグナルが豊富であったことから悪性病変がより疑われており,炎症もしくは多血性の良性病変との鑑別が困難であった.比較的遭遇する頻度が高い粉瘤,脂肪腫に関してはUS正診率90%以上と良好で,特徴的所見の正確な判読により高いUS正診率が得られる病変と考えられた.鑑別困難例などUS診断の限界と考えられる病変も存在するが,皮膚科領域の多岐にわたる病変のUS正診率をさらに向上させるためには,本領域の広い知識の習得が重要と考えられた.